深淵に眠る十字架 The second

ルカ(聖夜月ルカ)

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「そうか…おまえがそこまで本気なら話してやろう…
 ……おまえの母・エルスールは少し変わった悪魔でな…
トレルのことを本気で愛していた。
 逆に、トレルは、エルスールのことなんぞなんとも思ってはいなかった。
ただの都合の良い女だったんだ。
 彼女の悪魔としての力を利用していただけだ。
ところが、エルスールはそのうちトレルのことを独り占めしたいと思うようになった。
きっと、ケイト達の幸せそうな姿を見ているうちにそう思ってしまったのだろう。
そうでなくとも、トレルの女遊びは激しかったからな。
そして、その想いがよほど強かったのかエルスールはついに子供を身籠った。
 子供のことを喜ぶエルスールとは裏腹に、トレルはそのことを聞いてエルスールのことを疎ましく感じ始めていた。
そんな時、ケイトの身辺で問題が起こり、エルスールが悪魔だということが周りの人間にバレてしまったんだ。
 悪魔と一緒にいると、自分までが悪魔じゃないかと疑われると考えたトレルは、卑怯にもエルスールを殺した。
 腹の子も始末しようとしたが、その時、一緒にいたイアンが知恵を付けた。
この子供は、エルスールの力を受け継いでいるはずだから、これからはこいつをエルスールの代わりに使ったらどうだ?とな…」

 「そ…そんな…まさか、父さんが…
イアンさんが…」

オルジェスの顔からは血の気が失せ、その身体は小刻みに震えていた。



 「信じられないのも当然だな。しかし、これが真実なのだ。
おまえはイアンが元は人間だったということは知っているか?」

 「えっ?!まさか…
人間が悪魔になったりすること、出来るはずが…」

 「おまえは何も知らないのだな。
 完全には死んでない悪魔の血肉を食らえば、人間も悪魔になれるのだ。
ただし、そんなことが出来る人間はほとんどいない。
 悪魔に太刀打ち出来る人間等そうはいないからな。
しかし、イアンとはそういう恐ろしい男なのだ。
そうだ…イアンは、おまえのことも、いずれはトレルに食わせようと考えていたのかもしれないな…
それで、殺すのをやめさせたんじゃないだろうか…」

オルジェスは、両手で顔を覆い、力なくその場に膝をついた。
あまりの衝撃に声も出せないオルジェスを見下ろし、ベルナールは微笑んだ。



 「すまなかった…
やはり、こんな話はおまえに聞かせるべきではなかった…
傷付くのは、私だけで良かったんだ…」

ベルナールは、オルジェスの隣に腰を降ろし、指先でそっと涙を拭う。
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