73 / 355
帰還
9
しおりを挟む
「そうか…おまえがそこまで本気なら話してやろう…
……おまえの母・エルスールは少し変わった悪魔でな…
トレルのことを本気で愛していた。
逆に、トレルは、エルスールのことなんぞなんとも思ってはいなかった。
ただの都合の良い女だったんだ。
彼女の悪魔としての力を利用していただけだ。
ところが、エルスールはそのうちトレルのことを独り占めしたいと思うようになった。
きっと、ケイト達の幸せそうな姿を見ているうちにそう思ってしまったのだろう。
そうでなくとも、トレルの女遊びは激しかったからな。
そして、その想いがよほど強かったのかエルスールはついに子供を身籠った。
子供のことを喜ぶエルスールとは裏腹に、トレルはそのことを聞いてエルスールのことを疎ましく感じ始めていた。
そんな時、ケイトの身辺で問題が起こり、エルスールが悪魔だということが周りの人間にバレてしまったんだ。
悪魔と一緒にいると、自分までが悪魔じゃないかと疑われると考えたトレルは、卑怯にもエルスールを殺した。
腹の子も始末しようとしたが、その時、一緒にいたイアンが知恵を付けた。
この子供は、エルスールの力を受け継いでいるはずだから、これからはこいつをエルスールの代わりに使ったらどうだ?とな…」
「そ…そんな…まさか、父さんが…
イアンさんが…」
オルジェスの顔からは血の気が失せ、その身体は小刻みに震えていた。
「信じられないのも当然だな。しかし、これが真実なのだ。
おまえはイアンが元は人間だったということは知っているか?」
「えっ?!まさか…
人間が悪魔になったりすること、出来るはずが…」
「おまえは何も知らないのだな。
完全には死んでない悪魔の血肉を食らえば、人間も悪魔になれるのだ。
ただし、そんなことが出来る人間はほとんどいない。
悪魔に太刀打ち出来る人間等そうはいないからな。
しかし、イアンとはそういう恐ろしい男なのだ。
そうだ…イアンは、おまえのことも、いずれはトレルに食わせようと考えていたのかもしれないな…
それで、殺すのをやめさせたんじゃないだろうか…」
オルジェスは、両手で顔を覆い、力なくその場に膝をついた。
あまりの衝撃に声も出せないオルジェスを見下ろし、ベルナールは微笑んだ。
「すまなかった…
やはり、こんな話はおまえに聞かせるべきではなかった…
傷付くのは、私だけで良かったんだ…」
ベルナールは、オルジェスの隣に腰を降ろし、指先でそっと涙を拭う。
……おまえの母・エルスールは少し変わった悪魔でな…
トレルのことを本気で愛していた。
逆に、トレルは、エルスールのことなんぞなんとも思ってはいなかった。
ただの都合の良い女だったんだ。
彼女の悪魔としての力を利用していただけだ。
ところが、エルスールはそのうちトレルのことを独り占めしたいと思うようになった。
きっと、ケイト達の幸せそうな姿を見ているうちにそう思ってしまったのだろう。
そうでなくとも、トレルの女遊びは激しかったからな。
そして、その想いがよほど強かったのかエルスールはついに子供を身籠った。
子供のことを喜ぶエルスールとは裏腹に、トレルはそのことを聞いてエルスールのことを疎ましく感じ始めていた。
そんな時、ケイトの身辺で問題が起こり、エルスールが悪魔だということが周りの人間にバレてしまったんだ。
悪魔と一緒にいると、自分までが悪魔じゃないかと疑われると考えたトレルは、卑怯にもエルスールを殺した。
腹の子も始末しようとしたが、その時、一緒にいたイアンが知恵を付けた。
この子供は、エルスールの力を受け継いでいるはずだから、これからはこいつをエルスールの代わりに使ったらどうだ?とな…」
「そ…そんな…まさか、父さんが…
イアンさんが…」
オルジェスの顔からは血の気が失せ、その身体は小刻みに震えていた。
「信じられないのも当然だな。しかし、これが真実なのだ。
おまえはイアンが元は人間だったということは知っているか?」
「えっ?!まさか…
人間が悪魔になったりすること、出来るはずが…」
「おまえは何も知らないのだな。
完全には死んでない悪魔の血肉を食らえば、人間も悪魔になれるのだ。
ただし、そんなことが出来る人間はほとんどいない。
悪魔に太刀打ち出来る人間等そうはいないからな。
しかし、イアンとはそういう恐ろしい男なのだ。
そうだ…イアンは、おまえのことも、いずれはトレルに食わせようと考えていたのかもしれないな…
それで、殺すのをやめさせたんじゃないだろうか…」
オルジェスは、両手で顔を覆い、力なくその場に膝をついた。
あまりの衝撃に声も出せないオルジェスを見下ろし、ベルナールは微笑んだ。
「すまなかった…
やはり、こんな話はおまえに聞かせるべきではなかった…
傷付くのは、私だけで良かったんだ…」
ベルナールは、オルジェスの隣に腰を降ろし、指先でそっと涙を拭う。
0
あなたにおすすめの小説
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
魔王と呼ばれた勇者、或いは勇者と呼ばれた魔王 〜最強の魔剣で自由に生きる! 金も女も、国さえも思いのまま!! …でも何かが違うみたいです
ちありや
ファンタジー
クラスメートからのイジメが元で死んでしまった主人公は、その報われぬ魂を見かねた女神によって掬い上げられ異世界で転生する。
女神から授けられた不思議な剣を持つことで、彼はあらゆる敵に打ち勝ちあらゆる難問を解き明かし、あらゆる女性を虜にする力を手に入れる。
無敵の力を手に入れた男が次に望む物は果たして…?
不定期連載(7〜10日間隔で出していく予定)
『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』
月神世一
SF
【あらすじ】
「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」
坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。
かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。
背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。
目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。
鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。
しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。
部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。
(……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?)
現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。
すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。
精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。
これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。
英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~
ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。
彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。
敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。
結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。
だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。
「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」
謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。
少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。
これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。
【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった
ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。
学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。
だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。
暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。
よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!?
……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい!
そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。
赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。
「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」
そう、他人事のように見送った俺だったが……。
直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。
「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」
――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる