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帰還

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「ルークの母親はケイトという若い女だ。
その名前を聞いたことがあるんじゃないか?
トレルの幼馴染みだからな。
父親は……誰かわからん…」

「ケイトさんの話は聞いたことがある…
まさか、ルークがケイトさんの子だったなんて…では、なぜキャシーさんの子だなんて言ってるんだ?
しかも…父親がわからないっていうのはどういうことなんだ?」

「……トレルとイアンとランディが…三人がかりでケイトを犯した…
だから、父親が誰かはわからんのだ。
ケイトはオルジェという男を愛していた。
オルジェもケイトを愛していたから、出来た子供は二人の子として育てようとケイトに言った。
ケイトもそんなオルジェに支えられてなんとか前を向いて生きられるようになっていった。
ところが、子供が生まれてすぐに、三人は共謀してオルジェを殺した…
ケイトは、そのショックで自殺したんだ…」

「……そ…そんな……」

オルジェスは拳を握り締め、身体を震わせた。
感情の波が押し寄せ混乱しているのか、その視線は焦点が定まらない。



「わかったか、オルジェス…
トレルという男はそういう男なのだ…」

「と…トレルは、俺によくオルジェさんの話をしてくれた。
オルジェスという名前は、大切なオルジェからもらったんだって…
オルジェは弟みたいな存在だったってよく言ってた…なのに、そんな…」

オルジェの瞳からは、ほとばしる感情が涙の雫となって溢れ出していた。



「おまえには、酷なことをいうようだが…きっと、それはシャレのようなつもりで付けたのだろう。
オルジェを殺した事をなんとも思っていない証拠だな…
あるいは、おまえを丸め込むために考えたのか…」

「……畜生ーーーー!!」

オルジェは、拳で地面を叩いた。
まるで、トレルを殴りつけるかのように強く激しく…



「……だから、ルークが私達の兄弟である可能性もあるということだ…」

「ルーク…可哀想に…奴は何も知らずに、両親の仇であるランディに育てられて…」

「オルジェス…なぜ、三人がそんなことをしたかわかるか?」

ベルナールの問いに、オルジェスの動きが止まった 。 
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