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さらなる復讐

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「座らせてもらって良いか?」

「席なら他にも……
……なんだ、おまえらも悪魔か…
なんだかやけに気配が薄いな。」

酒場の片隅のテーブル席で、下級悪魔のブランドンは、オルジェスとベルナールを交互にみつめた。



「それはおまえの感度が鈍いのだろう。
私達は上級悪魔だ。」

「へぇ~……確かに、その物の言い方だけは上級悪魔のようだな。
その上級悪魔のおまえさん方が、こんなおいらに何の用があるってんだ?」

「そんなに急ぐことはあるまい。
まずは酒だな。」

ベルナールは、ワインと上等なブランデーを注文した。



「これは、あんたのおごりなんだろうな?
おいらはこんな高い飲み代、払えねぇぞ。」

「つまらん心配はするな。
好きなだけ飲むが良い。」

めったにありつけないうまい酒を目の前にして、ブランドンの表情には毀れんばかりの笑顔が浮かんだ。



「さぁ、どんどん飲めよ。」

ベルナールは、ブランドンに酒をすすめ、彼の機嫌がよくなった頃合を見計らって本題を切り出した。



「おまえは上級悪魔との伝手はあるか?」

「あぁ、もちろんだ。
おいらのお得意さんは上級悪魔が多いからな。」

「……実はな…
私達は、一度も貧しい暮らしをしたことがないのだ。
最近まではある人間の貴族の世話になっていたのだが、少し前に死んでしまってな…
これまでもそんなことの繰り返しだった。
そこで、考えたのだ。
これからは上級悪魔の世話になろうとな。
それならば、寿命の短い人間とは違い、こう度々探すこともいらないからな。」

「……なるほど、確かにあんたの容姿ならパトロンになりたがる女はいくらでもいるだろうな。」

ブランドンは、なめるような目つきでベルナールを眺め回した。



「出来るだけ金持ちが良い。
それと、私達兄弟を一緒に世話してくれると助かるのだが…」

「兄弟!?
あんたら兄弟なのか…あんまり似てねぇな。
まぁ、良いや…それなら打ってつけの知り合いがいるが……
男でも大丈夫か?」

「あぁ、そんなことなら、全く構わん。」

その返答に、オルジェスは驚きベルナールの顔をのぞきこんだ。
当のベルナールのまるで動揺していない様子に、オルジェスの驚きはますます大きなものになった。


 
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