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さらなる復讐

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「……ティンガさん、ここでは、昔、火事があったんですか?
それにトレルおじさんが何か関係してるんですか?」

 「いえ…ちょうど、トレルさんが来られてた時期に火事がありまして…
村は燃えてしまいましたが、誰も亡くなったり怪我をした者はいなかったのですよ。」

 「そうだったんですか…」

ルークは、差し出された酒に酔った振りをして、早めに隣の建物に戻った。



 (どうもおかしい。
あのティンガって奴は、絶対に何かを隠してる。
 共通の敵っていうのは誰のことなんだ…?
それから、村全体が燃えてしまうような大火…それにトレルが何か関係してるのか?
……そうだ、それとアズラエルって男…妙に小人達と仲が良いようだが、一体どういう奴なんだろう?)



しばらくすると、窓から見える村の明かりは一つ、また一つと消え、やがて、村全体が漆黒の闇と静寂に包まれた。



 (そろそろやるか…)

ルークは、高鳴る胸の鼓動を感じながら、ベッドの上に油をかけた。



 (これだけじゃあ、この家しか燃えないかな?)

ルークは敷地内に納屋があったことを思い出す。
 納屋には鍵もかかっておらず、その扉はすんなりと開いた。



 (あった!)

そこには大量のランプの油が置いてあった。



ルークは、再び部屋に戻り、油をまいたベッドに火を点ける。
 赤い炎は、ルークが予想したよりも速い勢いで周りのものを飲みこんで行く。
その光景に、ルークの胸の鼓動は早まり、手足はガタガタと震え、口の中はからからに乾いた。



 (次は納屋だ!)

 自分に言い聞かせるように、ルークは心の中でそう呟き、そのまま外へ飛び出した。
 振り返ると、窓越しに真っ赤な炎が見えたが、それにはまだ誰も気が付いてはいないようだった。
ルークは、慌ててランプの油をその場にぶちまけ、そこに火種を投げこんだ。
それと同時に炎は大きく燃えあがり、ちょうどその時、ルークのいた建物で硝子の弾け割れる音が響く。



 「火事だーーーー!」

 誰かの上ずった叫び声が上がった。



ルークは逃げた。
 真っ暗な闇の中を走り抜け、湖の上の見えない道を飛び跳ねるように走り続け、後ろも振り返らず、息が切れ倒れるのではないかと思う程、ただひたすらに走り続けた。 
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