281 / 355
復讐の連鎖
94
しおりを挟む
*
(あのくらいのことで怒ってしまうとは…私も全く大人気ないことをしてしまったものだ。)
上等のワインを抱えたアズラエルは、トレルの家に向かっていた。
あれからすぐに反省はしたものの、なんとなく気まずくなかなか決心が着かないままに時が流れた。
しかし、こういう問題は時間が経てば経つ程に顔を合わせにくくなるもの。
アズラエルはようやく心を決め、決まりの悪さを埋めるためのワインを買った。
(トレルの愛する女性のために花束でも買って来た方が良かったのだろうか?
……ここまで来てそんなことを考えても仕方がないな。)
つまらない考えに失笑しながら、アズラエルはトレルの家の扉を叩く。
いつもなら勝手に家の中に飛ぶのだが、一緒に住む女性がいると聞いてはそういうことは出来ない。
中からの返事はなかった。
不審に感じたアズラエルがノブを回すと、扉はすんなりと開いた。
開いた途端、いやな臭いがアズラエルの鼻をつく。
(この臭いは……!)
「トレル!いるのか!?」
家の中は特におかしな様子はなかったが、においは奥へ進むほどきつくなっていく。
「トレル、入るぞ!」
トレルの部屋の扉を開いた途端、腐臭は一気に強まり、アズラエルはとっさに腕で鼻を覆う。
腐臭の源が、ベッドの上の女の死体だということはアズラエルにはすぐにわかった。
女の顔を見たアズラエルの瞳が大きく見開かれる。
「トレル!」
柱にくくりつけられた血みどろのトレルは、虚ろな目をして身動き一つしなかった。
「トレル!大丈夫か!」
もしや死んでいるのではないかと思ったトレルが小さな瞬きをしたことで、アズラエルはほっと胸を撫で下ろした。
すぐに猿ぐつわをはずし縄を解き、アズラエルはトレルを抱き起こす。
トレルの痩せこけたその顔は土のような色をしていた。
「トレル、何があった!?」
トレルは微かに唇を動かすだけで、また目を閉じ、ゆっくりと倒れこむ。
アズラエルは、倒れ掛かった身体を受け止め、その頬に平手を打った。
その衝撃にトレルははっとしたように目を開いたが、またすぐに目を閉じた。
(まずい…かなり弱ってるな…)
(あのくらいのことで怒ってしまうとは…私も全く大人気ないことをしてしまったものだ。)
上等のワインを抱えたアズラエルは、トレルの家に向かっていた。
あれからすぐに反省はしたものの、なんとなく気まずくなかなか決心が着かないままに時が流れた。
しかし、こういう問題は時間が経てば経つ程に顔を合わせにくくなるもの。
アズラエルはようやく心を決め、決まりの悪さを埋めるためのワインを買った。
(トレルの愛する女性のために花束でも買って来た方が良かったのだろうか?
……ここまで来てそんなことを考えても仕方がないな。)
つまらない考えに失笑しながら、アズラエルはトレルの家の扉を叩く。
いつもなら勝手に家の中に飛ぶのだが、一緒に住む女性がいると聞いてはそういうことは出来ない。
中からの返事はなかった。
不審に感じたアズラエルがノブを回すと、扉はすんなりと開いた。
開いた途端、いやな臭いがアズラエルの鼻をつく。
(この臭いは……!)
「トレル!いるのか!?」
家の中は特におかしな様子はなかったが、においは奥へ進むほどきつくなっていく。
「トレル、入るぞ!」
トレルの部屋の扉を開いた途端、腐臭は一気に強まり、アズラエルはとっさに腕で鼻を覆う。
腐臭の源が、ベッドの上の女の死体だということはアズラエルにはすぐにわかった。
女の顔を見たアズラエルの瞳が大きく見開かれる。
「トレル!」
柱にくくりつけられた血みどろのトレルは、虚ろな目をして身動き一つしなかった。
「トレル!大丈夫か!」
もしや死んでいるのではないかと思ったトレルが小さな瞬きをしたことで、アズラエルはほっと胸を撫で下ろした。
すぐに猿ぐつわをはずし縄を解き、アズラエルはトレルを抱き起こす。
トレルの痩せこけたその顔は土のような色をしていた。
「トレル、何があった!?」
トレルは微かに唇を動かすだけで、また目を閉じ、ゆっくりと倒れこむ。
アズラエルは、倒れ掛かった身体を受け止め、その頬に平手を打った。
その衝撃にトレルははっとしたように目を開いたが、またすぐに目を閉じた。
(まずい…かなり弱ってるな…)
0
あなたにおすすめの小説
ワシの子を産んでくれんか
KOU/Vami
ライト文芸
妻に先立たれ、息子まで亡くした老人は、息子の妻である若い未亡人と二人きりで古い家に残された。
「まだ若い、アンタは出て行って生き直せ」――そう言い続けるのは、彼女の未来を守りたい善意であり、同時に、自分の寂しさが露見するのを恐れる防波堤でもあった。
しかし彼女は去らない。義父を一人にできないという情と、家に残る最後の温もりを手放せない心が、彼女の足を止めていた。
昼はいつも通り、義父と嫁として食卓を囲む。けれど夜になると、喪失の闇と孤独が、二人の境界を静かに溶かしていく。
ある夜を境に、彼女は“何事もない”顔で日々を回し始め、老人だけが遺影を直視できなくなる。
救いのような笑顔と、罪のような温もり。
二人はやがて、外の世界から少しずつ音を失い、互いだけを必要とする狭い家の中へ沈んでいく――。
崖からポイ捨てされた不運令嬢ですが、銀髪イケメン竜王に『最愛の伴侶』としてスカウトされました!
有賀冬馬
恋愛
不作も天災も、全部わたしのせい!?
「不運な女」と虐げられ、生贄として崖から捨てられたわたし、ミラ。
でも、落ちた先で待っていたのは、まぶしいほど綺麗な銀髪の竜王・アルベルト様でした!
「君がいたから、この国は守られていたんだよ」
えっ、わたしって実はすごい聖女だったの!?
竜宮城で贅沢三昧&溺愛生活スタート!
そんな中、わたしを捨てて大ピンチになった元婚約者が「ミラ、戻ってきて!」と泣きついてきて……。
救世の結界師マールちゃん~無能だと廃棄されましたが、敵国で傭兵のおっさん達に餌付けされてるので、今さら必要と言われても戻りません~
ぽんぽこ@3/28新作発売!!
ファンタジー
「ウチの子、可愛いうえに最強すぎるんだが――!?」
魔の森の隣、辺境伯家。 そこで八歳のメイド・マールは、食事も与えられず“要らない人間”として扱われていた。
――そしてある日ついに、毒と魔獣の禁忌領域《魔の森》へ捨てられてしまう。
「ここ……どこ?」
現れた魔獣に襲われかけたその瞬間。
救いに現れたのは――敵国の”イケオジ”傭兵隊だった。
「ほら、食え」
「……いいの?」
焚き火のそばで差し出された“温かいお粥”は、マールに初めての「安心」と「ごはん」を教えてくれた。
行き場を失った幼女は、強面のおじさん傭兵たちに餌付けされ、守られ、少しずつ笑えるようになる―― そんなシナリオだったはずなのに。
旅の途中、マールは無意識に結界を張り、猛毒の果実を「安全な食べ物」に変えてしまう。
「これもおいしいよ、おじさん!食べて食べて!」
「ウチの子は天才か!?」
ただ食べたいだけ。 だけどその力は、国境も常識もくつがえす。
これは、捨てられた欠食幼女が、敵国でお腹いっぱい幸せになりながら、秘められた力で世界を巻き込んでいく物語。
※若干の百合風味を含みます。
最強のチート『不死』は理想とはかけ離れていました ~ 人と関わりたくないので史上最強の家族と引きこもりを目指したいと思います
涅夢 - くろむ
ファンタジー
何をやってもうまくいかなかった前世。人間不信になってしまった超ネガティブ中年。そんなおっさんが転生時に見つけてしまった「不死」という能力。これで悠々自適なスローライフが確実なものに……。だがしかし、最強のチート能力であるはずの「不死」は理想とはかけ離れていた。
『え!?なんでワカメ!?』
うっかり人外に身を落としてしまった主人公。謎の海藻から始まる異世界生活。目的からかけ離れた波乱万丈の毎日が始まる……。
いくら強くなっても不安で仕方ない。完璧なスローライフには憂いがあってはならないのだ!「創造魔法」や「寄生」を駆使して生き残れ!
なるべく人と関わりたくない主人公が目指すは「史上最強の引きこもり」
と、その道連れに史上最強になっていく家族の心温まるほっこり生活もお送りします。
いや、そっちがメインのはず……
(小説家になろうでも同時掲載中です)
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
織田信長 -尾州払暁-
藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。
守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。
織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。
そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる