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決意
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「……本当にたいしたもんだな。
あんたにはこんなこと、なんでもないことなんだな。
なのに、そんなことが俺にはなぜ出来ないんだろう?」
「……年季が違うさ。」
アズラエルの冗談に、トレルも思わず苦笑する。
「そうだったな…それにしても、俺はあまりにだめ過ぎないか?」
「君は元々人間だぞ。
それに、想像力の豊かなタイプではないからじゃないか。
君は心のどこかで、こんなことは自分には出来ない…もしかしたら、そんな風に思ってるんじゃないだろうか?」
「……なるほど、そうなのかもしれないな。
俺は、古くから悪魔とのつきあいはあったが、やはり自分とは別の種類の者だと思っていたのかもしれない。
悪魔になったことを受け入れると言っておきながら、心の中ではまだ受け入れていなかったのかもしれないな…」
アズラエルは、俯くトレルの肩に優しく手を置いた。
「そう、悲観することはないさ。
一度、感覚を掴んでしまえば後は簡単だ。
……ところで、せっかくここまで来たんだ…リンク達に会って行くか?」
トレルは黙って首を振る。
「……いや、それはまたの機会にしておこう…
それよりもアズラエル…ちょっと森の中を歩かないか…
ここは静かで居心地が良い。」
「そうだな…」
二人は言葉を交わすこともなく、ただゆっくりと森の中を歩いた。
フォーラスに身体を乗っ取られ、リュタンの村に火を点けてしまったこと…
そして、そのことでイアンにこっぴどく叱られたこと…
アルグを誘拐してケイトが突然姿を消したこと…
この森で起こった遥か昔の出来事が、まるで昨日のことのようにトレルの頭を駆け巡った。
(イアン…ケイト…そしてオルジェ…
……どうか、俺を見守っていてくれよ)
トレルは心の中でそっと呟いた。
「……アズラエル。
どこでも良い。
適当にいろんな場所に連れていってくれないか?
移動の感覚を覚えたいんだ。」
「……ここはもう良いのか?」
「あぁ…」
アズラエルは頷き、トレルの腕を掴むと、二人の姿は森からかき消えた。
あんたにはこんなこと、なんでもないことなんだな。
なのに、そんなことが俺にはなぜ出来ないんだろう?」
「……年季が違うさ。」
アズラエルの冗談に、トレルも思わず苦笑する。
「そうだったな…それにしても、俺はあまりにだめ過ぎないか?」
「君は元々人間だぞ。
それに、想像力の豊かなタイプではないからじゃないか。
君は心のどこかで、こんなことは自分には出来ない…もしかしたら、そんな風に思ってるんじゃないだろうか?」
「……なるほど、そうなのかもしれないな。
俺は、古くから悪魔とのつきあいはあったが、やはり自分とは別の種類の者だと思っていたのかもしれない。
悪魔になったことを受け入れると言っておきながら、心の中ではまだ受け入れていなかったのかもしれないな…」
アズラエルは、俯くトレルの肩に優しく手を置いた。
「そう、悲観することはないさ。
一度、感覚を掴んでしまえば後は簡単だ。
……ところで、せっかくここまで来たんだ…リンク達に会って行くか?」
トレルは黙って首を振る。
「……いや、それはまたの機会にしておこう…
それよりもアズラエル…ちょっと森の中を歩かないか…
ここは静かで居心地が良い。」
「そうだな…」
二人は言葉を交わすこともなく、ただゆっくりと森の中を歩いた。
フォーラスに身体を乗っ取られ、リュタンの村に火を点けてしまったこと…
そして、そのことでイアンにこっぴどく叱られたこと…
アルグを誘拐してケイトが突然姿を消したこと…
この森で起こった遥か昔の出来事が、まるで昨日のことのようにトレルの頭を駆け巡った。
(イアン…ケイト…そしてオルジェ…
……どうか、俺を見守っていてくれよ)
トレルは心の中でそっと呟いた。
「……アズラエル。
どこでも良い。
適当にいろんな場所に連れていってくれないか?
移動の感覚を覚えたいんだ。」
「……ここはもう良いのか?」
「あぁ…」
アズラエルは頷き、トレルの腕を掴むと、二人の姿は森からかき消えた。
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