深淵に眠る十字架 The second

ルカ(聖夜月ルカ)

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決意

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「ありがとう、アズラエル。
 今日はひさしぶりにいろんな所に連れていってもらって楽しかったよ。」

 「君は最近家にばかりいたもんな。
 気晴らしが出来たなら良かった。」

 「あぁ、ここんとこちょっと煮詰まってたから本当に楽しかったよ。
 俺はただ連れて行ってもらっただけなのに、えらく腹が減ったのはなぜなんだろうな。
それと、アズラエル…俺、なんとなく移動する時の感覚みたいなものが少し覚えられたような気がするんだ。
 気のせいかもしれないけどな…」

 「そうか、それなら、また明日も一緒に飛んでみよう。」

 「本当か?
それは嬉しいけど…あんたは疲れないのか?」

 「あのくらい、なんともないさ。」



それから数日間、二人は、あちこちの町を移動して周った。
 何度も何度も…今までに行ったことのある町…そして見知らぬ町まで飛びまくった。
そんなある日、森の中を散策中にトレルは唐突にアズラエルに言った。



 「アズラエル、ここはさっき昼飯を食った町から近いんだよな?」

 「あぁ、そうだ。」

 「俺……やってみる。
さっきの町に、大きな木があっただろ?
あれがやけに印象に残ってるんだ。
 今なら飛べそうな気が…」

 「そうか!なら、やってみろ!
あの木をしっかりとイメージして…」

トレルは、アズラエルに向かって深く頷くと、緊張した顔でじっと目を閉じた。
アズラエルはトレルの様子を静かに見守る。




 「……はぁっ!
やっぱりだめだ。」

 大きく息を吐き出したトレルを見て、アズラエルは笑う。



 「トレル…なんで息を止めるんだ。
そう緊張しなくて良いんだ。
 自然に…ごく自然にあの場所を思い出せ。
あの木…とても大きな木だが威圧するような雰囲気ではなかったな。
まるで大きな人が両手を広げているようで……木の葉の擦れる音…確かあのあたりはなにかの花の甘い香りもしていたな…
そよ風が心地よくて…木漏れ日が差して…」

アズラエルの穏やかで耳障りの良い声に、トレルは目を閉じ静かに聞き入った。



 「そうだ…そうだったな…
うん…木の上の方には小鳥もいたぞ…可愛い声の小鳥だ。」

 「行けるぞ、トレル。
 君はあの場所に行きたいと思えば、すぐに…
君にとっては距離なんてないも同じだ。
 瞬き一つするかしないかの間に君の身体はあの場所に飛べるんだ。
 君がそれを望みさえすれば…」

 「俺が望めば……」

 次の瞬間、トレルの姿はその場所から静かにかき消えた。



 「飛べたっ!」

 目の前から姿を消したトレルに、アズラエルは興奮した声を上げた。
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