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泉の精霊
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一万人目の人物は、穏やかな瞳をした中年の男だった。
精霊に向かって恭しく一礼し、その場に跪く。
「じゃあ、早速だけど、どうしてこの泉の水が欲しいのか、それを僕に話してくれる?」
フォルテュナは、男には興味なさげに一瞥しただけで、さらっとそう呟いた。
「はい。では、話させていただきます。
実は、私の息子が事故にあい、ひどい怪我を負いました。
一時は命も危ぶまれたのですが、幸いな事に息子はなんとかその危機を脱し、少しずつ回復して参りました。
しかし、喜んだのも束の間、回復するにつれ息子の異変に気が付いたのです。
息子は、あろうことか記憶の一切を失っていたのです。
私や妻のことはもちろんのこと、自分のことや言葉さえも忘れていたのです…」
男の話が終わり、しばらくの間を置いた後…
唐突にフォルテュナが口を開いた。
「ふ~ん。
それで、息子さんの記憶を取り戻すために泉の水がほしいってことなんだね。
でも、そんな話は前にも聞いたことがあるよ。
残念だけど、僕はありきたりなお涙頂戴話にはほとほと飽きてるんだよね。
そういう話さえすれば、泉の水がもらえると思ってる輩が多過ぎてね…
どうせお涙頂戴なら、もっと工夫してもらわないとつまらないね。
なに?もうそれでおしまいなの?
そんなんじゃ、水はあげられないよ。」
フォルテュナは、男の方に顔を向けることなくそう言うと、白羽扇をゆっくりと動かした。
男は、しばらくフォルテュナのことをみつめていたが、やがて、ぽつりと呟いた。
「フォルテュナ様…
願い事を変えてもよろしゅうございますか?」
「あぁ、構わないよ。
僕はどんな願い事だって構わない。
重要なのは、人間の話が僕を楽しませてくれるかどうかってことだからね…
それで、どんな願い事に変えるって言うの?」
「では…
心を失くした精霊様が、失くした心を取り戻せるように…と。」
フォルテュナの手の動きが止まり、彼の視線が男を捕らえた。
「……なかなか面白そうな話だね。
どういうことなのか、詳しく聞かせてくれる?」
精霊に向かって恭しく一礼し、その場に跪く。
「じゃあ、早速だけど、どうしてこの泉の水が欲しいのか、それを僕に話してくれる?」
フォルテュナは、男には興味なさげに一瞥しただけで、さらっとそう呟いた。
「はい。では、話させていただきます。
実は、私の息子が事故にあい、ひどい怪我を負いました。
一時は命も危ぶまれたのですが、幸いな事に息子はなんとかその危機を脱し、少しずつ回復して参りました。
しかし、喜んだのも束の間、回復するにつれ息子の異変に気が付いたのです。
息子は、あろうことか記憶の一切を失っていたのです。
私や妻のことはもちろんのこと、自分のことや言葉さえも忘れていたのです…」
男の話が終わり、しばらくの間を置いた後…
唐突にフォルテュナが口を開いた。
「ふ~ん。
それで、息子さんの記憶を取り戻すために泉の水がほしいってことなんだね。
でも、そんな話は前にも聞いたことがあるよ。
残念だけど、僕はありきたりなお涙頂戴話にはほとほと飽きてるんだよね。
そういう話さえすれば、泉の水がもらえると思ってる輩が多過ぎてね…
どうせお涙頂戴なら、もっと工夫してもらわないとつまらないね。
なに?もうそれでおしまいなの?
そんなんじゃ、水はあげられないよ。」
フォルテュナは、男の方に顔を向けることなくそう言うと、白羽扇をゆっくりと動かした。
男は、しばらくフォルテュナのことをみつめていたが、やがて、ぽつりと呟いた。
「フォルテュナ様…
願い事を変えてもよろしゅうございますか?」
「あぁ、構わないよ。
僕はどんな願い事だって構わない。
重要なのは、人間の話が僕を楽しませてくれるかどうかってことだからね…
それで、どんな願い事に変えるって言うの?」
「では…
心を失くした精霊様が、失くした心を取り戻せるように…と。」
フォルテュナの手の動きが止まり、彼の視線が男を捕らえた。
「……なかなか面白そうな話だね。
どういうことなのか、詳しく聞かせてくれる?」
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