3 / 18
泉の精霊
2
しおりを挟む
一万人目の人物は、穏やかな瞳をした中年の男だった。
精霊に向かって恭しく一礼し、その場に跪く。
「じゃあ、早速だけど、どうしてこの泉の水が欲しいのか、それを僕に話してくれる?」
フォルテュナは、男には興味なさげに一瞥しただけで、さらっとそう呟いた。
「はい。では、話させていただきます。
実は、私の息子が事故にあい、ひどい怪我を負いました。
一時は命も危ぶまれたのですが、幸いな事に息子はなんとかその危機を脱し、少しずつ回復して参りました。
しかし、喜んだのも束の間、回復するにつれ息子の異変に気が付いたのです。
息子は、あろうことか記憶の一切を失っていたのです。
私や妻のことはもちろんのこと、自分のことや言葉さえも忘れていたのです…」
男の話が終わり、しばらくの間を置いた後…
唐突にフォルテュナが口を開いた。
「ふ~ん。
それで、息子さんの記憶を取り戻すために泉の水がほしいってことなんだね。
でも、そんな話は前にも聞いたことがあるよ。
残念だけど、僕はありきたりなお涙頂戴話にはほとほと飽きてるんだよね。
そういう話さえすれば、泉の水がもらえると思ってる輩が多過ぎてね…
どうせお涙頂戴なら、もっと工夫してもらわないとつまらないね。
なに?もうそれでおしまいなの?
そんなんじゃ、水はあげられないよ。」
フォルテュナは、男の方に顔を向けることなくそう言うと、白羽扇をゆっくりと動かした。
男は、しばらくフォルテュナのことをみつめていたが、やがて、ぽつりと呟いた。
「フォルテュナ様…
願い事を変えてもよろしゅうございますか?」
「あぁ、構わないよ。
僕はどんな願い事だって構わない。
重要なのは、人間の話が僕を楽しませてくれるかどうかってことだからね…
それで、どんな願い事に変えるって言うの?」
「では…
心を失くした精霊様が、失くした心を取り戻せるように…と。」
フォルテュナの手の動きが止まり、彼の視線が男を捕らえた。
「……なかなか面白そうな話だね。
どういうことなのか、詳しく聞かせてくれる?」
精霊に向かって恭しく一礼し、その場に跪く。
「じゃあ、早速だけど、どうしてこの泉の水が欲しいのか、それを僕に話してくれる?」
フォルテュナは、男には興味なさげに一瞥しただけで、さらっとそう呟いた。
「はい。では、話させていただきます。
実は、私の息子が事故にあい、ひどい怪我を負いました。
一時は命も危ぶまれたのですが、幸いな事に息子はなんとかその危機を脱し、少しずつ回復して参りました。
しかし、喜んだのも束の間、回復するにつれ息子の異変に気が付いたのです。
息子は、あろうことか記憶の一切を失っていたのです。
私や妻のことはもちろんのこと、自分のことや言葉さえも忘れていたのです…」
男の話が終わり、しばらくの間を置いた後…
唐突にフォルテュナが口を開いた。
「ふ~ん。
それで、息子さんの記憶を取り戻すために泉の水がほしいってことなんだね。
でも、そんな話は前にも聞いたことがあるよ。
残念だけど、僕はありきたりなお涙頂戴話にはほとほと飽きてるんだよね。
そういう話さえすれば、泉の水がもらえると思ってる輩が多過ぎてね…
どうせお涙頂戴なら、もっと工夫してもらわないとつまらないね。
なに?もうそれでおしまいなの?
そんなんじゃ、水はあげられないよ。」
フォルテュナは、男の方に顔を向けることなくそう言うと、白羽扇をゆっくりと動かした。
男は、しばらくフォルテュナのことをみつめていたが、やがて、ぽつりと呟いた。
「フォルテュナ様…
願い事を変えてもよろしゅうございますか?」
「あぁ、構わないよ。
僕はどんな願い事だって構わない。
重要なのは、人間の話が僕を楽しませてくれるかどうかってことだからね…
それで、どんな願い事に変えるって言うの?」
「では…
心を失くした精霊様が、失くした心を取り戻せるように…と。」
フォルテュナの手の動きが止まり、彼の視線が男を捕らえた。
「……なかなか面白そうな話だね。
どういうことなのか、詳しく聞かせてくれる?」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する
ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。
夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。
社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。
ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。
「私たち、離婚しましょう」
アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。
どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。
彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。
アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。
こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。
遺産は一円も渡さない 〜強欲な夫と義実家に捨てられた私、真の相続人と手を組み全てを奪い返す~ (全10話)
スカッと文庫
恋愛
「お前の価値なんて、その遺産くらいしかないんだよ」
唯一の肉親だった祖父を亡くした夜、夫の健一と義母から放たれたのは、あまりにも無慈悲な言葉だった。
四十九日も待たず、祖父が遺した1億2000万円の遺産をアテに贅沢三昧を目論む夫。だが、彼には隠し通している「裏切り」があった――。
絶望の淵に立たされた由美の前に現れたのは、亡き祖父が差し向けた若き凄腕弁護士・蓮。
「おじい様は、すべてお見通しでしたよ」
明かされる衝撃の遺言内容。そして、強欲な夫たちを地獄へ叩き落とすための「相続条件」とは?
虐げられてきた妻による、一発逆転の遺産争奪&復讐劇がいま幕を開ける!
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
思いを込めてあなたに贈る
あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる