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泉の精霊
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「…そんなこと…無駄だと思わない?
確かに泉の水はどんなことだって叶えてくれる。
でも、僕の気持ちが昔と同じように戻ったとしても…しばらくすればまた同じことの繰り返し…
僕はきっとまた人間達の醜い欲望に絶望し、また同じように心を閉ざしてしまうんだろうね。
そして、あと一万人待ったとしても、あなたと同じ願い事をしてくれる人なんてきっと現れやしない。
そうなったら僕は…今よりさらに深く傷付くんじゃないかな?
つまり、あなたの優しさは一時的なもので…僕のためになるもんじゃない…
いや、むしろもっと残酷なものだと思うけど…違う?
でも、あなたの気持ちは嬉しかったよ。
泉の水は息子さんのために使うと良いよ…
そしたら、奥さんもきっとまた笑顔になれるから。」
男は、フォルテュナの差し出す水を受け取ることはしなかった。
「精霊様…少し考え方を変えてみませんか?
つまり……探す事を楽しんでみるのです。」
「探すことを…楽しむ…?」
「そうです。
貴重なものは簡単にはみつかりません。
どこにでもあって、誰にでも見つけられるものはそもそも貴重なものではないのです。
苦労してみつけるからこそ、みつけた時の感動は大きい…
そうは思われませんか?」
男は、フォルテュナに向かって穏やかな微笑を浮かべた。
「人間の話を聞いて心の中を見通して…
そして、何度も何度もうんざりした後に、嘘偽りのない人間をみつけたら…
それは、あなたの額の宝石にも匹敵するような輝きを感じさせてくれるのではないでしょうか?」
「でも、どれだけ待ってもそんな貴重な人間がいなかったら?」
「その心配はありません。
必ず、そういう人間はいるものです…」
「そうかな?
僕はそれほど人間を信じちゃいない…
あなたがそれほどまでに言うのなら、僕にその証をくれる…?」
「証…?しかし、どうすれば…」
「そういう人間は必ずいるってことを僕が忘れないようにしてくれれば良いんだよ…」
男は意味がわからず、ただじっとフォルテュナの顔をみつめていた。
「それは、つまり……あなたが時々ここに来てくれること…」
フォルテュナは、空を見上げまるで独り言のようにそう呟いた。
男は息を吐き、大きく頷いた。
「フォルテュナ様…
ありがとうございます…」
「さ…話が終わったら早くその水を持ってお帰りよ。
……次に会える日を楽しみにしてるよ。」
しかし、男は、今度もまた水を受け取らなかった。
誰もがほしがる泉の水を…
「私にはその水は必要ありません。
私の願いはもう叶ったのですから…」
男は、フォルテュナに頭を下げ、その場を立ち去った。
「……本当にあなたはおかしな人だね…
それに、あなたは大事なことを忘れてるよ。
泉の水は飲まないと願いは叶わないんだよ…」
そう呟くフォルテュナの瞳から、きらりと光るものがこぼれて落ちた…
確かに泉の水はどんなことだって叶えてくれる。
でも、僕の気持ちが昔と同じように戻ったとしても…しばらくすればまた同じことの繰り返し…
僕はきっとまた人間達の醜い欲望に絶望し、また同じように心を閉ざしてしまうんだろうね。
そして、あと一万人待ったとしても、あなたと同じ願い事をしてくれる人なんてきっと現れやしない。
そうなったら僕は…今よりさらに深く傷付くんじゃないかな?
つまり、あなたの優しさは一時的なもので…僕のためになるもんじゃない…
いや、むしろもっと残酷なものだと思うけど…違う?
でも、あなたの気持ちは嬉しかったよ。
泉の水は息子さんのために使うと良いよ…
そしたら、奥さんもきっとまた笑顔になれるから。」
男は、フォルテュナの差し出す水を受け取ることはしなかった。
「精霊様…少し考え方を変えてみませんか?
つまり……探す事を楽しんでみるのです。」
「探すことを…楽しむ…?」
「そうです。
貴重なものは簡単にはみつかりません。
どこにでもあって、誰にでも見つけられるものはそもそも貴重なものではないのです。
苦労してみつけるからこそ、みつけた時の感動は大きい…
そうは思われませんか?」
男は、フォルテュナに向かって穏やかな微笑を浮かべた。
「人間の話を聞いて心の中を見通して…
そして、何度も何度もうんざりした後に、嘘偽りのない人間をみつけたら…
それは、あなたの額の宝石にも匹敵するような輝きを感じさせてくれるのではないでしょうか?」
「でも、どれだけ待ってもそんな貴重な人間がいなかったら?」
「その心配はありません。
必ず、そういう人間はいるものです…」
「そうかな?
僕はそれほど人間を信じちゃいない…
あなたがそれほどまでに言うのなら、僕にその証をくれる…?」
「証…?しかし、どうすれば…」
「そういう人間は必ずいるってことを僕が忘れないようにしてくれれば良いんだよ…」
男は意味がわからず、ただじっとフォルテュナの顔をみつめていた。
「それは、つまり……あなたが時々ここに来てくれること…」
フォルテュナは、空を見上げまるで独り言のようにそう呟いた。
男は息を吐き、大きく頷いた。
「フォルテュナ様…
ありがとうございます…」
「さ…話が終わったら早くその水を持ってお帰りよ。
……次に会える日を楽しみにしてるよ。」
しかし、男は、今度もまた水を受け取らなかった。
誰もがほしがる泉の水を…
「私にはその水は必要ありません。
私の願いはもう叶ったのですから…」
男は、フォルテュナに頭を下げ、その場を立ち去った。
「……本当にあなたはおかしな人だね…
それに、あなたは大事なことを忘れてるよ。
泉の水は飲まないと願いは叶わないんだよ…」
そう呟くフォルテュナの瞳から、きらりと光るものがこぼれて落ちた…
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