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泉の精霊Ⅲ
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「僕は父の顔を覚えていません。
父は、僕がまだ幼い頃に亡くなりました。
母は、祖母に僕の世話を任せ、僕達の暮らしを支えるために一生懸命働きました。
祖母は僕を可愛がってくれましたが、それでも僕は本当は母と一緒にいたかった…
だけど、そんなことを言ってはいけないことも、僕は幼いながらにわかっていたのです。
母は僕らのために働いてくれていたのですから…
……僕が10歳になるかならないかの時、祖母が病に倒れました。
それからはとても大変な日々が続きました。
祖母の薬代を稼ぐために、母は今まで以上に働きました。
家にいる時はずっと祖母の介護をして、おそらく寝る暇もなかったのではないかと思います。
そんな日々の続く中、僕も少しずつ成長し、多少は母の手助けが出来るようになった頃、祖母はひっそりと亡くなったのです。
その頃には僕も15になってましたから、近所のお店で働かせてもらうことになりました。
祖母が亡くなったことはとても悲しいことでしたが、皮肉な事にそれから少しずつ僕達の生活は楽になってきたのです。
僕もだんだんと仕事に慣れ、自分に自信が持てるようになって来ました。
これからは、もっと働いて母さんに楽をさせてあげよう!…そう思った矢先、今度は母が倒れたのです…
少し楽になったことで、張り詰めていた糸が緩んだのかもしれません。
今までの無理が祟ったのかもしれません。
とにかく母の身体は弱りきっていて、少し休んだ程度で回復するものではないことをお医者様から伝えられました。
母の身体を治すための薬代は高く、僕達の暮らしはまた苦しいものに逆戻りしました。」
「……長いね。
君、そんなに喋って疲れない?」
少年の熱のこもった身の上話を、フォルテュナの冷静な声がさえぎった。
少年は、そんなフォルテュナに哀しげな視線を向け、一息吐くとまた続きを話し始めた。
父は、僕がまだ幼い頃に亡くなりました。
母は、祖母に僕の世話を任せ、僕達の暮らしを支えるために一生懸命働きました。
祖母は僕を可愛がってくれましたが、それでも僕は本当は母と一緒にいたかった…
だけど、そんなことを言ってはいけないことも、僕は幼いながらにわかっていたのです。
母は僕らのために働いてくれていたのですから…
……僕が10歳になるかならないかの時、祖母が病に倒れました。
それからはとても大変な日々が続きました。
祖母の薬代を稼ぐために、母は今まで以上に働きました。
家にいる時はずっと祖母の介護をして、おそらく寝る暇もなかったのではないかと思います。
そんな日々の続く中、僕も少しずつ成長し、多少は母の手助けが出来るようになった頃、祖母はひっそりと亡くなったのです。
その頃には僕も15になってましたから、近所のお店で働かせてもらうことになりました。
祖母が亡くなったことはとても悲しいことでしたが、皮肉な事にそれから少しずつ僕達の生活は楽になってきたのです。
僕もだんだんと仕事に慣れ、自分に自信が持てるようになって来ました。
これからは、もっと働いて母さんに楽をさせてあげよう!…そう思った矢先、今度は母が倒れたのです…
少し楽になったことで、張り詰めていた糸が緩んだのかもしれません。
今までの無理が祟ったのかもしれません。
とにかく母の身体は弱りきっていて、少し休んだ程度で回復するものではないことをお医者様から伝えられました。
母の身体を治すための薬代は高く、僕達の暮らしはまた苦しいものに逆戻りしました。」
「……長いね。
君、そんなに喋って疲れない?」
少年の熱のこもった身の上話を、フォルテュナの冷静な声がさえぎった。
少年は、そんなフォルテュナに哀しげな視線を向け、一息吐くとまた続きを話し始めた。
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