78~運命のカード

ルカ(聖夜月ルカ)

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崩れる塔

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「これは、ガネイ草ではありませんか…助かります。」

それは、標高の高い場所にしか自生しない万能薬の材料とされる薬草だった。
 売れば、相当、高値になるものをデニスは快く差し出した。
スピロスは、ディオニシスの身体の上に薬草を載せ、その上から手をかざす。
 薬草はみるみるうちにディノニシスの服の中に吸い込まれるように沈みこんで行った。
 皆がその光景を目を丸くして見守る中、スピロスは、同じ動作を黙々と何度も繰り返す。



 「どなたか、この者に血をいただけませんか?」

 「血…?
どこか切るのか?」

 「いえ、ただ手首に触れさせていただくだけです。
 痛くもなんともありません。
それに、あなたの身体の負担になる程は採りません。」

 「そうかい?それじゃあ、良いぜ!
おい、キリス、おまえもやれ!」

 「えぇーーーっっ!」

キリスは眉間に皺を寄せ、不満げな声を漏らしたが、それでも部屋から逃げ出す事はなかった。



 「あたしのも使っておくれ。」

スピロスは、アドニアに頷くと、まず、片方の手でデニスの手首を…そして、もう片方の手でディオニシスの手首を掴み、じっと目を閉じた。
しばらくすると、デニスの手を離し、キリスの手首に持ち替えた。



 「これで、俺の血がこいつの身体に移ってるのか?」

スピロスは、キリスの問いにも答えることなく、何かに集中するようにじっと目を閉じたままだった。
 最後にアドニアの手首を掴みしばらくすると、ディオニシスの土色だった頬にほんの少し赤みが差した。



 「……ようやく効果が出て来たようです。
ですが、まだ助かるかどうかはわかりません。
 後は、この者の生命力がどれほど強いかということですね。
アドニア、今度は水を下さい。」

 結局、スピロスは一晩中、ディオニシスの傍につきっきりで治療の術を使い続けた。




 「アドニア、迷惑かけてすまないな。」

 「そんなこと、かまやしないさ。
 早くお行き!
そして、しばらくはトラニキアに近付くんじゃないよ。
みつかったら、きっと生きてはいられないからね。」

 「ありがとうよ!
アドニア、恩に着るぜ!」

デニスとキリスは、まだ夜が明けきらないうちに人知れず静かに町を離れた。 
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