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再会

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「それにしても、ロダンさん…
リアナは役に立ってるのか?
もし、なんだったら、リアナの代わりの魔導士を探して来るが…」

 「おまえさんもしつこい男じゃのう。
わしは、今、この子以外の助手をほしいとは思っておらんのじゃ。」

 「はいはい、わかりましたよ。
ロダンさんもリアナもこの通りの頑固者だ。
もう諦めるしかないな。」

アレクは、苦笑いを浮かべながら、キーファの背中を叩いた。



 「だったら…俺もここで働かせていただけないでしょうか?」

 「え…しかし、おまえさんは魔導の力も持たんし、ここで働くと言っても、これといってしてもらえることもないしのう。」

 「でも、俺のせいでこいつが働かされてるんだから、俺だってなにかしないと…」

 「じゃあ、材料集めなんてどうだ?
 今でも護符は作ったりしてるんだろう?」

 真剣なキーファの言葉を聞いて、アレクが横から口を挟んだ。



 「そういうことなら、すでに頼んである。」

 「で、でも、材料はたくさんあった方が……」

 「そりゃあ、特別な魔草でも見つけてくれるなら話は別じゃがな。
たとえば、トラキニアに行って紫魔色草をみつけてくるとか……」

 「おいおい、無茶なこと言うなよ……」

 困ったような顔をして頭を掻くアレクの隣で、キーファは何かを思い出すかのように小首を傾げた。



 「紫魔色草って…黒っぽい紫色で、葉っぱがぎざぎざして、白い筋が入ってて…」

 「おや、紫魔色草を知ってるのかい?」

 「リアナ…その草なら、近くにいっぱいあったよな?」

 「え?知らないわ、そんなの…」

 「あったじゃないか、サラニスの森に……」

その言葉に、リアナの眉が吊り上がった。



 「まぁ、兄さんったら、やっぱりあそこへ行ったことがあるのね?
あそこには絶対に行っちゃいけないって、あれほど言われてたのに…」

 「もう良いじゃないか。
 子供の頃の話なんだし。
とにかく、その草ならいっぱいあった。」

 「それはどこの話なんじゃ?」

 「俺の故郷のラーフィンの話だ。」

ロダンはそれを聞いて、くすくすと笑い始めた。



 「なんで笑うんだ?」

 「それなら、きっと似た草じゃよ。
なんせ、紫魔色草は、今まで寒い地方でしかみつかっておらん。
ラーフィンのような温暖な気候の場所にあるはずがない。」

 「でも、本当に俺は見たんだ!」

 「似たようなものがあるんじゃ。
 何の魔力も持たないもので、紫魔色草に似たものが…
そいつには白い筋がなくて……」

 「だから、俺が見たやつには白い筋があったんだって!」

キーファがむきになって、大きな声を上げた。
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