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罠
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「おまえは、ネストルの実の弟を間者にしようというのか?」
「……はい。」
「そんな馬鹿な…
確かに、ニコラスは実直な男だが、そんなことをあいつが承服するはずがない。
そんなことをすれば、私がネストルに疑いを持っていることが筒抜けになってしまう。」
「これはセルギオス王の知らぬこと。
私からの特命だということにいたしましょう。」
「だが……」
セルギオスは、何かを言いかけ、そして言葉を濁した。
「ニコラス様なら、きっとこの特命を見事に遂行されると思います。
少しの間でしたが、私は彼に接し、彼を信用できる人物だと感じました。
ネストル様とは違い、とても真っ直ぐな…あ、いえ、失礼いたしました。」
「いや…気にするな。
確かにあいつは子供の頃からとても生真面目な奴だった。
しかし、あの二人は仲の良い兄弟ではない。
ネストルは、ニコラスのことをたいそう嫌っている。」
セルギオス王は、そう言って小さな溜息を吐いた。
「それはなぜなのですか?」
「ネストルと比べると、ニコラスは何事においても劣っている。
それは、ネストルが群を抜いて優秀なせいで、なにもニコラスが特別劣っているということではないのだが、あいつにはそれが気に食わないらしい。
かといって、自分より優れていれば、きっとまた疎ましく思うのだろうが…
……それに、あいつはニコラスが妾腹の弟だという噂を信じている。」
「……そうでしたか、そのようなことでニコラス様のことを…」
「……愚かなやつだ。」
セルギオス王は、虚ろな視線を宙に泳がせた。
「……リガスよ、間者の件はおまえに一任する。」
小さな声でそう言い残すと、セルギオスはそっとその場を後にした。
「……はい。」
「そんな馬鹿な…
確かに、ニコラスは実直な男だが、そんなことをあいつが承服するはずがない。
そんなことをすれば、私がネストルに疑いを持っていることが筒抜けになってしまう。」
「これはセルギオス王の知らぬこと。
私からの特命だということにいたしましょう。」
「だが……」
セルギオスは、何かを言いかけ、そして言葉を濁した。
「ニコラス様なら、きっとこの特命を見事に遂行されると思います。
少しの間でしたが、私は彼に接し、彼を信用できる人物だと感じました。
ネストル様とは違い、とても真っ直ぐな…あ、いえ、失礼いたしました。」
「いや…気にするな。
確かにあいつは子供の頃からとても生真面目な奴だった。
しかし、あの二人は仲の良い兄弟ではない。
ネストルは、ニコラスのことをたいそう嫌っている。」
セルギオス王は、そう言って小さな溜息を吐いた。
「それはなぜなのですか?」
「ネストルと比べると、ニコラスは何事においても劣っている。
それは、ネストルが群を抜いて優秀なせいで、なにもニコラスが特別劣っているということではないのだが、あいつにはそれが気に食わないらしい。
かといって、自分より優れていれば、きっとまた疎ましく思うのだろうが…
……それに、あいつはニコラスが妾腹の弟だという噂を信じている。」
「……そうでしたか、そのようなことでニコラス様のことを…」
「……愚かなやつだ。」
セルギオス王は、虚ろな視線を宙に泳がせた。
「……リガスよ、間者の件はおまえに一任する。」
小さな声でそう言い残すと、セルギオスはそっとその場を後にした。
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