78~運命のカード

ルカ(聖夜月ルカ)

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 (何が気象観測だ。あのたぬきおやじめが…!)



 宿舎に戻ったネストルは、リガスの笑顔を思い出しては、拳を固く握りしめた。



 (しかし、こんなにも早くあいつの遺体がみつかるとは…
幸い、赤い雲が現れたことは気付かれていないようだが…
クレタスの捜索に加わっておいて良かった。
まず、私が疑われることはないだろう…)



その時、ネストルの物思いを破るように、扉を叩く音が部屋に響いた。



 「誰だ?」

 「はっ!ジャーメインにございます。」

 「ジャーメイン?……入れ。」

 深々と頭を下げるジャーメインが、ネストルの部屋に足を踏み入れた。



 「ジャーメイン…何用だ?」

 「はっ、ネストル様…あの……」

 「なんだ、はっきりと申せ!」

 「は、はいっ!じ、実は…赤い雲のことなのですが…」

ジャーメインのその言葉に、ネストルの眉間には深い皺が刻まれた。



 「あ…あの……」

 気まずい雰囲気に、ジャーメインはにわかに落ち着きをなくした。



 「おまえが言いたいのは、赤い雲のことをなぜリガスさんに言わないのかということだろう?」

 「は…はい、そ、その……」

ネストルは、わずかに口端を上げ、ゆっくりとジャーメインに近付いた。



 「ジャーメイン…私を信じろ。
 世の中にはどれほど良い者に見えても、実はそうではない者がいる。
それは、地位の高い者の中にももちろんいるのだ。
 私は、トラニキアの隊長であるだけではなく、セルギオス王の甥だ。
 当然、誰にも言えない重大な任務を背負うこともあるのだ。
……今はこれだけしか言えない。」

 低く静かな声でネストルはそう言うと、愁いを含んだ視線を宙に泳がせた。



 「さ、さしでがましいことを……申し訳ございません。」

ジャーメインはそう言い残し、部屋を後にした。
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