妖精からの贈り物

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
13 / 14
妖精からの贈り物

13





「か、母さん!
起きて!早く、起きてよ!」

「アンリ…!
どうしたんだい?
……まさか、ジョエルになにか…!」

「違うよ。ジョエルはなんともないよ。
そんなことより、こっち、こっち!」

アンリに手をひかれ、母親は寝巻きのままで家を飛び出した。



「ほら!」

アンリが指差す先を見て、母親は言葉を失った。



「母さん、すごいでしょう?」

「アンリ、こんなもの、どこから持ってきたんだい?
それに、これは……」

「持って来たんじゃないよ。
昨日、母さんに見せたじゃない。
あの黒い種がもうこんなに大きくなったんだ。」

「あの種が…?まさか!」

二人の目の前にあるのは、アンリと同じ位の背丈に伸びた一本の若木。
その枝には、赤や桃色、水色、黄緑…様々な色の花が咲いていた。



「綺麗な花だねぇ。
一体、どんな実がなるんだろう?
母さん、ほら、近付いてにおいを嗅いでみなよ。
すっごく良いにおいがするよ。」

アンリに言われるままに、母親は赤い花に鼻を近づける。



「……本当だ…
優しくて良い香りだね。」

「きっと、こんな甘い果物がなるんだろうね!
育つのもこんなに早いから、あと何日かしたら実がなるかもしれないね。」

母親は困惑した顔でわずかに微笑んだ。
目の当たりにした現実を少年のように素直には受け取れず、どこか不気味なものを感じながら…



「早く、ジョエルに食べさせてあげたいなぁ。」

アンリは希望に満ちた瞳で、不思議な木をじっとみつめた。







誰も、あの種が妖精からの贈り物であることを知らない。
不思議な力を持つ特別な種だということを知らない。


けれど、奇蹟の時はもうすぐそこまで来ている…
ある家族が笑顔になれる日はもう間近…

感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【1話完結】あなたの恋人は毎夜わたしのベッドで寝てますよ。

ariya
ファンタジー
ソフィア・ラテットは、婚約者アレックスから疎まれていた。 彼の傍らには、いつも愛らしい恋人リリアンヌ。 婚約者の立場として注意しても、アレックスは聞く耳を持たない。 そして迎えた学園卒業パーティー。 ソフィアは公衆の面前で婚約破棄を言い渡される。 ガッツポーズを決めるリリアンヌ。 そのままアレックスに飛び込むかと思いきや―― 彼女が抱きついた先は、ソフィアだった。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

とある令嬢の断罪劇

古堂 素央
ファンタジー
本当に裁かれるべきだったのは誰? 時を超え、役どころを変え、それぞれの因果は巡りゆく。 とある令嬢の断罪にまつわる、嘘と真実の物語。