魔法のパイ屋さん

ルカ(聖夜月ルカ)

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魔法のパイ屋さん

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コンコン!



「誰だい、こんなに早くから迷惑な奴だね、まったく…」

扉の向こうから姿を表したのは、カパエルよりもずっと背の低いしわくちゃの老婆だった。



「あ、あの…おばあちゃんが魔女さん…ですか?」

「いかにも、わしは魔女じゃが、かっぱがわしに何の……
ほほぉ…これは面白い!」

ふとカパエルの隣にいるルディを見上げた魔女は、意地の悪い微笑を浮かべた。



「その姿から察するに…わしのかぼちゃを盗んだんじゃな…」

「そ、それはだなぁ…」

「魔女のおばあちゃん、ごめんなさい!
こうなったのは僕のせいなの…」

「おまえさんの…?
何のことだかよくわからんが、そんなことはどうでもええ。
それで…おまえさんは、なぜここに来たんじゃ?
もしかして、そのかぼちゃを取ってほしいということかえ?」

「そ、そうなんだ!
こりゃあ話が早いや!
婆さん、早いとここのかぼちゃを取ってくれ!」

魔女はその言葉を鼻で笑った。



「たわけたことを言うでない。
おまえかこのかっぱか知らんが、わしの大切なかぼちゃを盗んだのは確かじゃろう。
そうでなければそんなことにはならんのじゃからな。
だが、わしは慈悲深い魔女じゃ。
おまえ達の謝罪次第では、許してやらんこともないぞえ。」

意味ありげに微笑む魔女の瞳が妖しく光る…
それが容易いことではないこと、しかし、それを拒むことは出来ないのだということは、お馬鹿なカパエルでさえも推測出来た。



「おばあちゃん、僕、なんでもするから…
だから、お願い!
ルディのかぼちゃを取ってあげて…!」

ひたむきなカパエルに向かい、魔女は不気味な笑い声を上げた。



「どうやら、おまえさんの気持ちは本気みたいじゃな。
それじゃあ、わしの言うことをちゃんとやり遂げられたら、そのかぼちゃを取ってやることにしよう。」

「本当?ありがとう!おばあちゃん!
それで、僕は何をしたら良いの?」

「今から説明するから、よく聞くんじゃぞ…」


 
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