魔法のパイ屋さん

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
13 / 15
魔法のパイ屋さん

13

しおりを挟む
「ほんにこの男は……」

魔女はルディを睨み付けながら、ブツブツと小さな声で何かを呟いていたが、やがて、カパエルの方に向き直りにっこりと微笑んだ。



「カパエルや、今まで手伝ってくれて本当にありがとうよ。
さぁ、これをお食べ。」

魔女は、焼き立ての二つのパイと煎れ立てのお茶の載ったトレイを抱えていた。



「カパエルはこっち、おまえはこっちじゃ!」

「わぁ、おいしそう~!!」

立ち上るかぼちゃの甘い香りに誘われ、カパエルはパイを一口頬張った。



「おいしい~!!
おばあちゃん、これ、ものすごくおいしいよ!」

カパエルの言葉に、魔女は嬉しそうな微笑を返す。



「おまえ…よく、こんなもんが食えるな…
この中にはいもりやら、こうもりやら、さそりやら…うっぷ…」

パイをみつめるルディの頬を一筋の冷や汗が伝う。



「馬鹿者!あれは魔法使いや魔女のための特別なパイにのみ入れるもんじゃ。
おまえらみたいな人間に、貴重な魔女のパイを食べさせるものか。
これはごく普通のパンプキンパイじゃから、安心せい!」

「本当かぁ…?」

ルディは、フォークでパイをあちこちをほじくったが、魔女の言葉通り、種以外のものはみつからなかった。



「……いやなら食べんでもええんじゃ。
その代わり、わしもその頭は取らんからな!」

魔女の口端があがり、皮肉な微笑が宿る。



「畜生~!!足元見やがって…!!
食えば良いんだろ!食えば……!」

ルディは、パイを口の中にかきこみ、さらにお茶で流しこんだ。



「かーーーっ!なんだ、この味…苦い…ぺっ!」

「えぇっ?そう?
僕はとってもおいしかったけど…」

「おまえ、馬鹿なだけじゃなくて、味覚も狂ってやがんな。
こんなもんがうまいとは……」

魔女は、ルディのその言葉に俯き、肩を震わせて笑いを堪える。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

愚者による愚行と愚策の結果……《完結》

アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。 それが転落の始まり……ではなかった。 本当の愚者は誰だったのか。 誰を相手にしていたのか。 後悔は……してもし足りない。 全13話 ‪☆他社でも公開します

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...