あれこれ短編集

ルカ(聖夜月ルカ)

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幻想チョコレート

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俺は子供の頃から甘い物が大好きだった。
中でもチョコレートには目がなく、毎日好き放題に食べていたおかげで子供の頃の俺は丸々と太ってるだけではなく、虫歯で歯が抜け、「歯抜けあんまん」などと言う最悪なあだなを付けられていた。
しかし、そんなことも当時はそれほど気にはしてなかった。
歯抜けだったのもあんまんみたいにぷくぷくしていたのも事実だし、変なあだ名も甘い物が食べられるならそれで良かったのだ。

俺の人生が大きく変わったのは中一の終わりの頃のことだった。
バレンタインデー当日、俺は楽しみにしていたチョコを一つももらえなかったのだ。
そんなことは想定外だっただけに、その衝撃は大きかった。
考えてみれば、小学校の時は、隣の家の女の子が毎年くれていたからそれでつい安心していたのだと思う。
その子が私立の女子校に行くようになってからすっかり疎遠になってしまっていたことをその日まで俺は忘れていたのだ。
クラスの女子の大半は、男前の岡本とスポーツが出来る徳田に群がっていた。
ごく一部の男子生徒達が誇らしげに抱えた可愛らしいラッピングのチョコレート。
それはほとんどが手作りのチョコだということも、俺はその時、初めて知った。
どうやら、本命の男には手作りのチョコをあげるのが普通だということをそれまで俺は気付いてなかったのだ
今まで食べたことのない「手作りチョコ」なるものに俺の心は鷲掴みにされていた。
どんなに食べたくとも一般の店には売ってない特別なチョコレートとは一体どんなものなのだろうと、俺の頭の中は想像でいっぱいになっていた。
そして、もう一つ知ったのは、この日を境に男子の格付けが決まるということ。
より多くのチョコをもらった者こそが王者だ。
だから、チョコさえもらえれば、男は義理でも喜ぶ。
俺は、それさえももらえなかった…
そのことはさすがに俺にもチクッと来た。
だが、モテないということよりも、モテればチョコがいっぱいもらえる、手作りチョコが食べられるということが、俺の心を支配した。

 
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