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日記帳
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「私は、何も調べてなどいませんよ。
その日記帳は普通のものではないと言ったでしょう?
片手を乗せたことで、日記帳はあなたのことをすべて知ります。
そして、今までの出来事が自動的に書きこまれるんです。
それだけではありません…もちろん、これから起こる事もです。」
「な、なんだって!片手を乗せただけで俺のことを全部知るだって?
そんな馬鹿な…」
周りの客に気遣い、ランディは声をひそめながら驚きの声を発した。
「世の中には考えも付かないような不思議なものがあるのですよ。」
男は、ランディの驚く様子を見てどこか楽しんでいるような笑いを浮かべた。
そのことは癪に障ったが、物心が付いてから聞かされた自分が生まれた時の状況…
ランディの父親は、予定日がまだだったことからその日は海に釣りに行っており、ランディが生まれかかっていることを隣の住人に知らされ、慌てて岩場から足を滑らせ海に落ち、ずぶ濡れになって駆け付けた事なども克明に書かれてあった。
特に有名人でもなんでもない自分のことをこれほど調べても、男にとって何一つ得はない筈だ。
それを考えると、もしかしたら男の言うことは本当なのかもしれないとランディには思えた。
「この日記帳には今日までのことがすべてこんな風に書かれてるのか?」
男はゆっくりと頷いた。
「それだけでは、ありません。
書かれてはいませんが、未来のことも書く事が可能なのです。」
「……それはどういうことなんだ?」
ランディは理解出来なかった言葉を率直に男に問うた。
「耳にされたことがありませんか?
過去はひとつだが、未来はいくつもあるというようなことを…
つまり、簡単に言うと過ぎ去ったことはもう変えようがありませんが、まだ起きていないことには選択肢がたくさんある…ということでしょうか。
そこで、あなたがその日のページをめくる度に…運命のサイコロが振られるということです。
未来のページにどんなことが書きこまれるのかは、あなたの出した目次第…」
「それは必ずそうなるのか!?」
「ええ…絶対に変えられません。
あなたがそのページをめくったら最後、あなたの未来は決まってしまうのです。
絶対にそれを変えることは出来ません。」
ランディは手にした日記帳をみつめ、ごくりと息を飲んだ。
「怖ければ、未来のページをめくらなければ良いのです。
そうすれば、さっきあなたが言われた通り、わざわざ書かずともその日のことが正確に書きこまれる楽な日記帳ですみます。」
「俺は怖いなんて一言も…」
「では、ご馳走様でした。」
男はランディの言葉には耳も貸さずに立ち上がり、帽子を取って頭を下げると、そのまま店を後にした。
その日記帳は普通のものではないと言ったでしょう?
片手を乗せたことで、日記帳はあなたのことをすべて知ります。
そして、今までの出来事が自動的に書きこまれるんです。
それだけではありません…もちろん、これから起こる事もです。」
「な、なんだって!片手を乗せただけで俺のことを全部知るだって?
そんな馬鹿な…」
周りの客に気遣い、ランディは声をひそめながら驚きの声を発した。
「世の中には考えも付かないような不思議なものがあるのですよ。」
男は、ランディの驚く様子を見てどこか楽しんでいるような笑いを浮かべた。
そのことは癪に障ったが、物心が付いてから聞かされた自分が生まれた時の状況…
ランディの父親は、予定日がまだだったことからその日は海に釣りに行っており、ランディが生まれかかっていることを隣の住人に知らされ、慌てて岩場から足を滑らせ海に落ち、ずぶ濡れになって駆け付けた事なども克明に書かれてあった。
特に有名人でもなんでもない自分のことをこれほど調べても、男にとって何一つ得はない筈だ。
それを考えると、もしかしたら男の言うことは本当なのかもしれないとランディには思えた。
「この日記帳には今日までのことがすべてこんな風に書かれてるのか?」
男はゆっくりと頷いた。
「それだけでは、ありません。
書かれてはいませんが、未来のことも書く事が可能なのです。」
「……それはどういうことなんだ?」
ランディは理解出来なかった言葉を率直に男に問うた。
「耳にされたことがありませんか?
過去はひとつだが、未来はいくつもあるというようなことを…
つまり、簡単に言うと過ぎ去ったことはもう変えようがありませんが、まだ起きていないことには選択肢がたくさんある…ということでしょうか。
そこで、あなたがその日のページをめくる度に…運命のサイコロが振られるということです。
未来のページにどんなことが書きこまれるのかは、あなたの出した目次第…」
「それは必ずそうなるのか!?」
「ええ…絶対に変えられません。
あなたがそのページをめくったら最後、あなたの未来は決まってしまうのです。
絶対にそれを変えることは出来ません。」
ランディは手にした日記帳をみつめ、ごくりと息を飲んだ。
「怖ければ、未来のページをめくらなければ良いのです。
そうすれば、さっきあなたが言われた通り、わざわざ書かずともその日のことが正確に書きこまれる楽な日記帳ですみます。」
「俺は怖いなんて一言も…」
「では、ご馳走様でした。」
男はランディの言葉には耳も貸さずに立ち上がり、帽子を取って頭を下げると、そのまま店を後にした。
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