あれこれ短編集

ルカ(聖夜月ルカ)

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日記帳

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自分の用が済むと、振り返る事もなくさっさと姿を消した奇妙な男…
ランディはしばらく男が出て行った店の扉をみつめていたが、やがて大きな溜め息を吐いた。



 (今日は厄日だ…
ギャンブルには負けるし、おかしな男に関わってしまった…
こんな日は早く戻った方が良いな…)

ランディは金を置いて立ち上がるが、その視線はテーブルの日記帳の上でぴたりと停まる。
 薄気味の悪い日記帳を持ち帰るのはいやだったが、そのままにしておくのも気がひけた。
ランディは再び席に着き、手にした日記帳をぱらぱらとをめくる。
 外見はさほど厚くはないのに、そこにはランディが生まれてから一日も欠かすことなく、何がしかの主だった出来事が書かれていた。
そのページ数は、一週間や十日ではとても読みきれない程の膨大なものだ。




 (今日のことも、そのまんまだ…
損した金額までちゃんと書いてある。
しかも、男に日記帳をもらうことまで…)

ランディはあらためて背筋に寒いものを感じたが、人には知られたくないようなことも書かれている日記帳をそのまま置いていく気にはなれず、重い気分を感じながらも家に持ち帰ることにした。



 *




 (……間違いない。
ここに書かれてあることは、全部本当のことだ。)

ランディは持ち帰った日記帳を熱心に読み耽った。
 小さな子供時代のことはランディ自身に記憶がないこともあり、真実かどうかの判断は難しかったが、物心付いてからのことはすべてが明確に記されていた。



 (そうだ…ここに書いてある通りだ!)

 時には、忘れかけていた記憶がその日記帳のおかげで正確に思い出せることもあった。
 家を出た日の事、初めて働いた工場の事、賭け事にはまるようになったきっかけ、父親の死んだ日のこと…それらはまるで本当に体験したかのように書かれていた。



 (どう考えても無理だ。
 俺のことをこんなに詳しく調べることなんて、誰にも出来る筈がない…
 ……やっぱり、これは普通のものじゃないんだ。
あの男が言ったことは嘘じゃなかったんだ…)

そう考えると、ランディの心の中は不安で埋め尽されそうになったが、さらに別の言葉も思い出した。
 未来のページをめくりさえしなければ、これはただ書く必要がないだけの楽な日記帳だということを。

 
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