あれこれ短編集

ルカ(聖夜月ルカ)

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日記帳

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(畜生!
こんなもんがあるせいで……なんだって俺がこんな想いをしなきゃならないんだ!
 俺は決めた!
 明日のことを見てやる!
どんな未来だって、構うもんか!)

 酒の勢いもあり、ランディはついに明日の日付のページを開いた。



 「そ…そんな…!」

そこには、明日の第4レースで買った1番の馬券が大当たりし、その足で金貸しに借りていた金を全額返し、晴れ晴れした気分で酒を飲んだと書いてあった。



 「そんな…俺が買うつもりなのは第3レースのアラビアンナイトだ。」

ランディは頭を抱えて俯いた。
それは、ランディが全くマークしていなかった馬であり、今までの実績からしてもとても勝ちそうには思えなかった。



 (俺は買わない…
こんな馬、絶対に買わないぞ!)

ランディは自分の予想にも自信があり、日記帳の言いなりになるのもいやだった。



 (こんなもの、気にすることはない!
 俺は俺のしたいようにするんだ!)



 *



 次の日、ランディは予定通り、競馬場へ向かった。
 前の晩、飲みすぎたことで起きるのは多少遅くなったが、第3レースには十分間に合う時間だった。
 酒のせいで痛む頭を抱え、ランディは身支度を整え、競馬場へ向かうバスに乗りこんだ。



 (俺が買うのは第3レースのアラビアンナイトだ。
 絶対に変えない!)



アラビアンナイトの勝敗については、日記帳には一言も書いてなかった。
そのことが不安には感じられたが、それでもランディは頑なに自分の予想と信念を信じることにした。



 (俺は、日記帳に振りまわされたりなんかしない。
 自分の意志で決めてやる!)



その時、バスががたがたと大きく揺れ、乗客達のざわめきの声が上がったかと思うと、そのまま動かなくなった。



 「みんな、ちょっと待っててくれ。
どうもエンジンの具合が悪いみたいだ。
なぁに、すぐによくなるさ。」

 運転手は乗客にそう声をかけると、工具箱を片手にバスを降りて行った。



しばらく待ったが運転手は戻る気配はなく、乗客の数人が様子を見に行ったが、彼らもまたなかなか戻っては来なかった。



 (早くしてくれよ。
 第3レースに間に合わなくなる…!)

そう思うと、まるで日記帳に書かれてあった通りになりそうな気がして、ランディの胸はざわさわと落ちつきをなくし始めた。



 (日記帳の言う通りになんかなってたまるか!)

ランディはバスを降り、競馬場に向かって駆け出した。

 
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