167 / 406
十字架の楽園
29
しおりを挟む
「リリィ、さっきの話には驚かされたよ。」
「外にいる間に、私はものすごく嘘吐きになってしまったみたいね。」
「リリィ…俺も…ここで暮らすよ!
ジョッシュを育てながら、ここで真面目に生きてみようと思う…」
「ジョシュア…」
私はジョシュアの身体を抱き締めた。
ジョシュアの心の傷は私より遥かに深いはず…
これからは、私が彼を守っていかなければ…そんな決意で胸が熱くなった。
「ジョシュア…これから忙しくなるわよ!」
その日から、私達は寝る間も惜しんで働いた。
最初に、研究室のホルマリン漬けの子供達をすべて埋葬した。
あの頃はなんとも思わなかったその光景は、本当は言い尽せないほど怖ろしく哀しいものだった。
博士達はなんという罪深いことをしてきたのだろう…
ジョシュアには悪いが、これを見れば博士達は間違いなく鬼だと思える。
それもリチャード等とは比べ物にならないような酷い鬼だ。
数十体にも及ぶ小さな遺体を地下に葬り、私達は心からの祈りを捧げた。
研究室の薬品や器具もすべて捨てた。
私やジョッシュの生まれた培養タンクも…
博士達の何十年もの研究の成果を、私達はすべて無に返した。
ジョッシュの記録を見て彼のことがいろいろとわかった。
彼が生まれたのは、私がここを出て145日目のことだった。
つまり、彼は本来ならばまだ2歳になるかならないかなのだが、成長促進剤の投与の結果、あのように発育してしまっていたのだ。
「親父が死ぬ前に言ってたよ。
なんで、リリィが出ていったのに探さなかったのかって聞いたら、あの頃、ちょうど第2号の生育がうまくいったんだって。
男子の場合、いつも同じような過程で死んでしまうのが、その難関をうまく突破出来るかどうかの瀬戸際だったんだって…
とにかく親父達はそのことで頭がいっぱいだったんだろうな…」
「……そういえば、あの頃の博士達はいつも以上に忙しそうだったわ。
ちょうどジョシュアを手がけていた頃だったのね…」
片付けには2週間近くかかった。
ジョッシュにはまだ特に大きな変化はなかったが、新しい暮らしには早くも順応して来ている。
すでに私達のことも、パパ、ママと呼ぶようになっていた。
ただ、それが名前の代わりに過ぎないこともわかっているのだけど…
私達はあれから一度だけ町に出かけた。
殺風景な屋敷の中に、暖かい色味のカーテンや絨毯を買い込んだ。
そして、ジョシュアの働いていた農場には、実家に戻ることになったと伝え、野菜の種や苗をたくさんもらってきた。
これからここでの生活が始まる…
私達は、ここでジョッシュを育てながら穏やかに暮らしていくつもりだ。
しばらくすればこの庭にも花や野菜が育ち、今までとはずいぶん違った景色に変わるだろう。
ジョッシュがどんな風な人間に育つかはまだわからない。
大きくなったらここを出ていくと言い出すかもしれない。
そうなったら、それでも構わないと思っている。
だけど、私達は一生ここを離れるつもりはない。
だって、私達は許されない罪を犯した罪人なのだから…
私達の居場所はここしかないのだから…
~fin
「外にいる間に、私はものすごく嘘吐きになってしまったみたいね。」
「リリィ…俺も…ここで暮らすよ!
ジョッシュを育てながら、ここで真面目に生きてみようと思う…」
「ジョシュア…」
私はジョシュアの身体を抱き締めた。
ジョシュアの心の傷は私より遥かに深いはず…
これからは、私が彼を守っていかなければ…そんな決意で胸が熱くなった。
「ジョシュア…これから忙しくなるわよ!」
その日から、私達は寝る間も惜しんで働いた。
最初に、研究室のホルマリン漬けの子供達をすべて埋葬した。
あの頃はなんとも思わなかったその光景は、本当は言い尽せないほど怖ろしく哀しいものだった。
博士達はなんという罪深いことをしてきたのだろう…
ジョシュアには悪いが、これを見れば博士達は間違いなく鬼だと思える。
それもリチャード等とは比べ物にならないような酷い鬼だ。
数十体にも及ぶ小さな遺体を地下に葬り、私達は心からの祈りを捧げた。
研究室の薬品や器具もすべて捨てた。
私やジョッシュの生まれた培養タンクも…
博士達の何十年もの研究の成果を、私達はすべて無に返した。
ジョッシュの記録を見て彼のことがいろいろとわかった。
彼が生まれたのは、私がここを出て145日目のことだった。
つまり、彼は本来ならばまだ2歳になるかならないかなのだが、成長促進剤の投与の結果、あのように発育してしまっていたのだ。
「親父が死ぬ前に言ってたよ。
なんで、リリィが出ていったのに探さなかったのかって聞いたら、あの頃、ちょうど第2号の生育がうまくいったんだって。
男子の場合、いつも同じような過程で死んでしまうのが、その難関をうまく突破出来るかどうかの瀬戸際だったんだって…
とにかく親父達はそのことで頭がいっぱいだったんだろうな…」
「……そういえば、あの頃の博士達はいつも以上に忙しそうだったわ。
ちょうどジョシュアを手がけていた頃だったのね…」
片付けには2週間近くかかった。
ジョッシュにはまだ特に大きな変化はなかったが、新しい暮らしには早くも順応して来ている。
すでに私達のことも、パパ、ママと呼ぶようになっていた。
ただ、それが名前の代わりに過ぎないこともわかっているのだけど…
私達はあれから一度だけ町に出かけた。
殺風景な屋敷の中に、暖かい色味のカーテンや絨毯を買い込んだ。
そして、ジョシュアの働いていた農場には、実家に戻ることになったと伝え、野菜の種や苗をたくさんもらってきた。
これからここでの生活が始まる…
私達は、ここでジョッシュを育てながら穏やかに暮らしていくつもりだ。
しばらくすればこの庭にも花や野菜が育ち、今までとはずいぶん違った景色に変わるだろう。
ジョッシュがどんな風な人間に育つかはまだわからない。
大きくなったらここを出ていくと言い出すかもしれない。
そうなったら、それでも構わないと思っている。
だけど、私達は一生ここを離れるつもりはない。
だって、私達は許されない罪を犯した罪人なのだから…
私達の居場所はここしかないのだから…
~fin
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる