あれこれ短編集

ルカ(聖夜月ルカ)

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十字架の楽園

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「リリィ、さっきの話には驚かされたよ。」

「外にいる間に、私はものすごく嘘吐きになってしまったみたいね。」

「リリィ…俺も…ここで暮らすよ!
ジョッシュを育てながら、ここで真面目に生きてみようと思う…」

「ジョシュア…」

私はジョシュアの身体を抱き締めた。
ジョシュアの心の傷は私より遥かに深いはず…
これからは、私が彼を守っていかなければ…そんな決意で胸が熱くなった。



「ジョシュア…これから忙しくなるわよ!」

その日から、私達は寝る間も惜しんで働いた。
最初に、研究室のホルマリン漬けの子供達をすべて埋葬した。
あの頃はなんとも思わなかったその光景は、本当は言い尽せないほど怖ろしく哀しいものだった。
博士達はなんという罪深いことをしてきたのだろう…
ジョシュアには悪いが、これを見れば博士達は間違いなく鬼だと思える。
それもリチャード等とは比べ物にならないような酷い鬼だ。
数十体にも及ぶ小さな遺体を地下に葬り、私達は心からの祈りを捧げた。

研究室の薬品や器具もすべて捨てた。
私やジョッシュの生まれた培養タンクも…
博士達の何十年もの研究の成果を、私達はすべて無に返した。

ジョッシュの記録を見て彼のことがいろいろとわかった。
彼が生まれたのは、私がここを出て145日目のことだった。
つまり、彼は本来ならばまだ2歳になるかならないかなのだが、成長促進剤の投与の結果、あのように発育してしまっていたのだ。



「親父が死ぬ前に言ってたよ。
なんで、リリィが出ていったのに探さなかったのかって聞いたら、あの頃、ちょうど第2号の生育がうまくいったんだって。
男子の場合、いつも同じような過程で死んでしまうのが、その難関をうまく突破出来るかどうかの瀬戸際だったんだって…
とにかく親父達はそのことで頭がいっぱいだったんだろうな…」

「……そういえば、あの頃の博士達はいつも以上に忙しそうだったわ。
ちょうどジョシュアを手がけていた頃だったのね…」



片付けには2週間近くかかった。
ジョッシュにはまだ特に大きな変化はなかったが、新しい暮らしには早くも順応して来ている。
すでに私達のことも、パパ、ママと呼ぶようになっていた。
ただ、それが名前の代わりに過ぎないこともわかっているのだけど…

私達はあれから一度だけ町に出かけた。
殺風景な屋敷の中に、暖かい色味のカーテンや絨毯を買い込んだ。
そして、ジョシュアの働いていた農場には、実家に戻ることになったと伝え、野菜の種や苗をたくさんもらってきた。

これからここでの生活が始まる…
私達は、ここでジョッシュを育てながら穏やかに暮らしていくつもりだ。
しばらくすればこの庭にも花や野菜が育ち、今までとはずいぶん違った景色に変わるだろう。
ジョッシュがどんな風な人間に育つかはまだわからない。
大きくなったらここを出ていくと言い出すかもしれない。
そうなったら、それでも構わないと思っている。
だけど、私達は一生ここを離れるつもりはない。



だって、私達は許されない罪を犯した罪人なのだから…
私達の居場所はここしかないのだから…



~fin
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