あれこれ短編集

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
217 / 406
ジャック・オー・ランタン

しおりを挟む




 (あぁ、つまんねぇ…)

ジャックは、鍋を叩く手を止め、ゆっくりと立ち上がりました。



 鍛冶屋の仕事は重労働。
しかも、ジャックは仕事が雑だと親方に叱られてばかりで、面白くありません。



 (幸い、親方は出かけてるし…ちょっと酒でも飲みに行くか。)

ジャックは仕事を放り出し、棚から金をくすねると外へ飛び出しました。



 「おい、ジャック!
こんなところで何してやがる!」

 運悪く、ジャックは商店街で親方と鉢合わせしてしまいました。



 「お、親方…じ、実は、隣町の知り合いの婆さんが、具合を悪くして俺を呼んでるってさっき報せが来て…」

 「隣町の婆さんだと?」

 「ええ、身寄りのない婆さんで、たまたま隣町に行った時に出逢いましてね。
 何度か家の修繕や買い物の手伝いをしてやったところ、俺のことを孫みたいに思ったようで…まぁ、『困ったことがあったら、いつでも言ってくれ』なんて言ってしまった俺が悪いんですけど…」

 「そうだったのか…身寄りがないんじゃ、婆さんも困ってるだろうな。
 年寄りに親切にするのは良いことだ。
じゃあ、早く行ってやれ。
あ、これで、婆さんに果物でも買って行ってやんな。」

 「親方、ありがとうございます。」

ジャックは、内心ほくそ笑み、町のはずれの酒場に繰り出しました。
しおりを挟む

処理中です...