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ひつじ年の年賀状
side 樹生1
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*
「あ…相川さん!」
僕は思わず声を出してしまってた。
だって、僕の目の前に、相川さんがいたんだから。
びっくりしすぎて、考える前に声が出てたんだ。
「え……?あ…ら、蘭学者!」
振り返った相川さんが、おかしなことを言った。
(な、なに?蘭学者って…??)
「あ、あの…相川さんだよね?」
「う、うん。」
そういえば、相川さんと最後に会ったのは、多分、十年近く前だったと思う。
相川さんのお父さんが亡くなられた時、僕は、呼ばれてもなかったけど、葬儀に行った。
相川さんのことが心配だったから…
あの時の相川さんは憔悴しきった顔をしてて…
そりゃあそうだ。
お父さんが亡くなられたんだから。
なのに、僕は気の利いた言葉も思いつかずに、ただ「無理しないで」としか言えなかった。
あの時と比べると、今、目の前にいる相川さんはずっと元気そうで、それだけで僕はどこか嬉しいような気がした。
だけど、相川さんは、なんだか落ち着きのない顔で僕をちらちら見てる。
(……もしかして、気付いてる!?)
そう思うと、僕の鼓動は一気に速さを増した。
「あ、あの、相川さん…」
「ご、ごめんなさい。」
僕と、相川さんの声が重なった。
「え…何?」
「あ……ご、ごめんね!
私、最近、すっごく物忘れが激しくて……そ、その…」
「どうかしたの?」
相川さんが、何を言おうとしてるのか僕にはよくわからなかった。
「あの……あなたの名前が思い出せないんだ!
ごめん!!」
そう言うと、相川さんは腰が折れ曲がるほど、頭を下げた。
「あ、相川さん、そんなことなら気にしないで!
僕、存在感薄いタイプだから…それに、もう十年くらい会ってないし…」
ちょっとショックだった。
相川さんは、僕のことを全く覚えてなかった。
だから、当然、あのことにも気付いていない。
「ち、違うの!
あなたの存在はよく覚えてるの。
高3の時、同じクラスだったよね。
家は、3丁目の自転車屋さんの三軒隣の大きな家で…順子の家のすぐそばだったから良く覚えてるんだ。」
「え…う、うん、その通りだよ。」
「あの…実は、あなたのこと、皆『蘭学者』っていうあだ名で呼んでて…それで、名前が……」
「そ、そうなんだ…」
そんなこと、今の今まで全く知らなかった。
でも、なんで、僕が蘭学者なんだろう?
「あ、あの…僕、松本です。
松本樹生。(まつもとみきお)」
「あ、そ、そうだ!
松本君!久しぶりだね!」
相川さんの微笑みはどこか不自然だ。
きっと、僕に気を遣って思い出したふりをしてるんだろう。
(相川さんは、昔から優しい人だったから……)
僕の脳裏には、当時の相川さんの笑顔が浮かんでいた。
影の薄い僕とは違い、彼女は目立つ存在だった。
文化祭や体育祭…いろんな決め事がある時、積極的に発言する彼女が僕にはとても眩しく思えた。
はきはきしてて、姉御肌っていうのかな…
面倒見が良い人だった。
もたもたしてる僕のこともよく面倒を見てくれた。
修学旅行の時もそうだったね。
僕が、お土産を買い損ねたことを知って、相川さんは自分のお土産をひとつ僕に譲ってくれた。
あのキーホルダーは、家族には渡さず、結局、僕がずっと鍵に付けて使ってたよ。
あれをなくした時は本当にショックだった…
鍵をなくす以上のショックだったよ。
あちこちを散々探したけど、結局、みつからなかったんだ。
「あ…相川さん!」
僕は思わず声を出してしまってた。
だって、僕の目の前に、相川さんがいたんだから。
びっくりしすぎて、考える前に声が出てたんだ。
「え……?あ…ら、蘭学者!」
振り返った相川さんが、おかしなことを言った。
(な、なに?蘭学者って…??)
「あ、あの…相川さんだよね?」
「う、うん。」
そういえば、相川さんと最後に会ったのは、多分、十年近く前だったと思う。
相川さんのお父さんが亡くなられた時、僕は、呼ばれてもなかったけど、葬儀に行った。
相川さんのことが心配だったから…
あの時の相川さんは憔悴しきった顔をしてて…
そりゃあそうだ。
お父さんが亡くなられたんだから。
なのに、僕は気の利いた言葉も思いつかずに、ただ「無理しないで」としか言えなかった。
あの時と比べると、今、目の前にいる相川さんはずっと元気そうで、それだけで僕はどこか嬉しいような気がした。
だけど、相川さんは、なんだか落ち着きのない顔で僕をちらちら見てる。
(……もしかして、気付いてる!?)
そう思うと、僕の鼓動は一気に速さを増した。
「あ、あの、相川さん…」
「ご、ごめんなさい。」
僕と、相川さんの声が重なった。
「え…何?」
「あ……ご、ごめんね!
私、最近、すっごく物忘れが激しくて……そ、その…」
「どうかしたの?」
相川さんが、何を言おうとしてるのか僕にはよくわからなかった。
「あの……あなたの名前が思い出せないんだ!
ごめん!!」
そう言うと、相川さんは腰が折れ曲がるほど、頭を下げた。
「あ、相川さん、そんなことなら気にしないで!
僕、存在感薄いタイプだから…それに、もう十年くらい会ってないし…」
ちょっとショックだった。
相川さんは、僕のことを全く覚えてなかった。
だから、当然、あのことにも気付いていない。
「ち、違うの!
あなたの存在はよく覚えてるの。
高3の時、同じクラスだったよね。
家は、3丁目の自転車屋さんの三軒隣の大きな家で…順子の家のすぐそばだったから良く覚えてるんだ。」
「え…う、うん、その通りだよ。」
「あの…実は、あなたのこと、皆『蘭学者』っていうあだ名で呼んでて…それで、名前が……」
「そ、そうなんだ…」
そんなこと、今の今まで全く知らなかった。
でも、なんで、僕が蘭学者なんだろう?
「あ、あの…僕、松本です。
松本樹生。(まつもとみきお)」
「あ、そ、そうだ!
松本君!久しぶりだね!」
相川さんの微笑みはどこか不自然だ。
きっと、僕に気を遣って思い出したふりをしてるんだろう。
(相川さんは、昔から優しい人だったから……)
僕の脳裏には、当時の相川さんの笑顔が浮かんでいた。
影の薄い僕とは違い、彼女は目立つ存在だった。
文化祭や体育祭…いろんな決め事がある時、積極的に発言する彼女が僕にはとても眩しく思えた。
はきはきしてて、姉御肌っていうのかな…
面倒見が良い人だった。
もたもたしてる僕のこともよく面倒を見てくれた。
修学旅行の時もそうだったね。
僕が、お土産を買い損ねたことを知って、相川さんは自分のお土産をひとつ僕に譲ってくれた。
あのキーホルダーは、家族には渡さず、結局、僕がずっと鍵に付けて使ってたよ。
あれをなくした時は本当にショックだった…
鍵をなくす以上のショックだったよ。
あちこちを散々探したけど、結局、みつからなかったんだ。
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