ラッキーアイテムお題短編集1

ルカ(聖夜月ルカ)

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缶ビール(おうし座)

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「ん?」

破ろうと手をかけたパッケージに、マジックで「引っ越し祝・山田」と書かれてあるのを、俺はみつけた。



引っ越し祝…ということは、引っ越しのゴタゴタであんな所に紛れこんだのか?
それにしたって、引っ越し祝っていつの話なんだ…と思った時、俺の脳裏にふと小さな疑問がわきあがった。



(ビールに消費期限ってあるのか?)



気になってビールの底を見てみると、そこに印字されてあった賞味期限はすでに約四年過ぎていた。
だけど、賞味期限と消費期限は違う。
ここにかいてあるのはあくまでも「賞味期限」だ。
……とはいえ、四年という歳月は長い。
これが食品なら、間違いなく捨ててるところだが…こいつは酒だ!
酒は腐らない筈!
いや、むしろ長い間熟成させた方が美味い筈。
うん、大丈夫だ!こんなこと、気にする必要ない!

俺は自分にそう言い聞かせながら、プルトップを持ち上げた。
……なんだか、妙に炭酸感が少ない気がするのは思いこみのせいか?
においは…いつもと…やっぱりちょっと違う…!?

もしも、これが腐っていたら…いや、まさか…酒なんだから腐ることなんてない…
大丈夫だ!ぜーーーーったいに大丈夫だ!
せっかくみつけた缶ビールを…五日ぶりの缶ビールを諦めてたまるもんか!

俺は意を決し、ビールを喉に流しこんだ。
なんだ、これ?
まずい…妙におかしな味だぞ!
金属の味もする…思ったより冷えてないせいか?



やばい…!?



いや、大丈夫だ!



やばいって!



大丈夫だってば!



俺の心は短い時間に葛藤を繰り返し、そして、最終的には理性が勝った…

やはりどうにも危険な気がして、断腸の想いでビールを流しにぶちまけた。
なにやら色もいつもより濁っているように思える。



しばらくすると俺の身体には蕁麻疹のようなものが現れた。
痛いようなかゆいような蕁麻疹を掻いていると、さっきのくそまずい味が思い出された。



それがトラウマになり、俺はしばらくビールが飲めなくなった。
金がないこともあったが、飲みたいという気持ちが消えていた。
さらに自転車の鍵がみつからないので駅まで歩いていたせいか、しばらくするとぽっこり出ていた腹はすっきりとした。

だが、それもまたすぐに元に戻った。
悪友の山田との仲直りのためにあげた祝杯はやっぱり最高で…
俺のトラウマはあっさりと消え去った。
ビールはやっぱりやめられない! 
 
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