ラッキーアイテムお題短編集1

ルカ(聖夜月ルカ)

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デジカメ(ふたご座)

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老婆は、店の前の道をまっすぐ行けば駅に出ると教えてくれた。
さっき歩いて来た道程を考えるとそれはありえないことだったが、歩いてみると実際にその通りだった。
狐につままれたような気分だったが、もしかしたらそれもこの所の疲れのせいかもしれない…
そう思い、私は深く考えることはやめた。



家に戻る途中で、私は近所の公園に立ち寄り、早速、先程のデジカメを取り出した。
公園の小さな花壇はいつも手入れがされ、綺麗な花が咲いている。
私は花には疎いから、誰もが知ってるような花の名前しかわからない。
一面に咲き誇っている可憐な黄色い花の名前も知らない。
でも、そんなことはどうでも構わない。
ただの試し撮りなのだから。

デジカメにはいくつかのボタンやダイヤルがついていたが、シャッターは位置的にすぐに予想が付いた。
花に近付き、ボタンを押すと軽いシャッター音が響いた。
撮ったものを見るのは…これも予想でダイヤルの一つを回してみると、目の前の黄色い花が見事に液晶に映し出された。
壊れてると思いこんでた私は、その画像を見てもまだどこか信じられず、続けて何枚か撮ってみたが、それらはすべて綺麗に撮れていた。



(本当に壊れてなかったんだ…)

やっと納得した私は、久し振りに心を弾ませながら家路に着いた。







「ただいま。」

誰もいないことがわかっていて、私は声をかけた。



人生には何があるかわからない。
ここへ越して来た時は、人生が薔薇色に見えていた。
そして、その幸せが壊れる日が来るなんて考えたこともなかった。



夫が体調不良を訴えたのは、一年近く前のことだった。
様々な検査を受けたが原因はなかなかわからず、数ヶ月後、ようやく宣告された病名は聞いた事もない難病だった。
国内での患者は極めて少なく、治療法もまだ確立されていない。
ただ、夫の容態がどんどん悪くなっていることは素人目にもはっきりとわかった。
症例が少ないだけに、医師には命の期限も予測しかねると言われた。
あと僅かかもしれないし、このままの状態で何年か生きるかもしれないと…
どんな状況であれ生きていてほしいと思う反面、そうなったらきっと恐ろしい額の入院費がかかるということもわかっていた。

身寄りのない私にとっては、彼だけが家族であり生きる希望だった。
彼がいなくなったら、きっと私も生きてはいけない…

彼にあとどのくらいの時間が残されているのかはわからないが、その時間はなによりも大切なもの。
それらの記憶を少しでも多く画像として残したいと思い立ったのはつい数日前のことだ。
だが、デジカメは考えていたよりも高く、現在の逼迫した経済状況ではとても手が出なかった。
そんな時に手に入れたこの格安のデジカメは、私にはまるで天からの贈り物のように思えた。 
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