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羽根ペン(おとめ座)
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部屋に戻った私はテーブルの上に便箋を広げ、インク壺にペン先をそっと浸す。
何から書くべきだろう…
普段、手紙を書きなれないせいか、それとも最期の手紙だという意識が気負いになっていたのか、最初の書き出しがなかなかうまくいかない。
私は大きく深呼吸をして、目を閉じ、頭の中を整理しようと試みた。
(そうだわ…最初は、「皆さん、さようなら。私は今から命を断ちます。」
これこそが一番素直な気持ちだわ。)
便箋にペン先が触れた途端、まるで生き物のようにペンが動き出した。
「私はまだ死にたくない」
(な、何なの、これは!?)
そこに書かれたのは私が今考えたこととは裏腹な……そう、私がずっと封じこめていた私の本心。
なぜ?どうして?
信じられない想いで、私は再びペン先を便箋に落とした。
「私はそんなに強くない!」
「誰か、助けて!」
「寂しい…」
「辛い…」
「怖い…」
次から次に、羽根ペンは、私の心の叫びを白い便箋に書き連ねた。
誰にも打ち明けられなかった私の真の心の叫びを…
その文字を見ているうちに、私は泣き出していた。
いつもいつも我慢して…唇を噛み締め堪えていた涙が、とめどなく溢れ出た。
泣いたら負けだ…甘えたらおしまいだ…誰も助けてくれる人なんていやしない…
そう言い聞かせ、長い間我慢しているうちに、涙の流し方さえ忘れたと思っていたのに、心の中の想いが私の瞳から涙に変わって流れ出た。
泣いて泣いて泣いて…
止まらない涙に顔が突っ張り、息が苦しくなる程泣き続けた時…
長い時間をかけてようやく出した決意が崩れ去っていることに私は気付いた。
本当は死にたくなんてなかった。
死ぬのは怖いし、どこかが酷く壊れたわけでも、酷い病に冒されたわけでもない私の若い肉体は…魂は心底では死にたくないと叫び続けていたことを私は知りつつもずっと押し隠していたのだ。
私は涙を拭い、再びペンを握った。
じっと目を閉じ、自分の本心を素直に心の中で確認する。
(もう嘘は吐かない…)
ゆっくりと動き出した羽根ペンは、流れるように文字を綴っていく…
「生きたい」
「幸せになりたい」
私の本心と意志が重なったその素直な言葉に、私の瞳からはまた熱い涙が溢れた。
部屋に戻った私はテーブルの上に便箋を広げ、インク壺にペン先をそっと浸す。
何から書くべきだろう…
普段、手紙を書きなれないせいか、それとも最期の手紙だという意識が気負いになっていたのか、最初の書き出しがなかなかうまくいかない。
私は大きく深呼吸をして、目を閉じ、頭の中を整理しようと試みた。
(そうだわ…最初は、「皆さん、さようなら。私は今から命を断ちます。」
これこそが一番素直な気持ちだわ。)
便箋にペン先が触れた途端、まるで生き物のようにペンが動き出した。
「私はまだ死にたくない」
(な、何なの、これは!?)
そこに書かれたのは私が今考えたこととは裏腹な……そう、私がずっと封じこめていた私の本心。
なぜ?どうして?
信じられない想いで、私は再びペン先を便箋に落とした。
「私はそんなに強くない!」
「誰か、助けて!」
「寂しい…」
「辛い…」
「怖い…」
次から次に、羽根ペンは、私の心の叫びを白い便箋に書き連ねた。
誰にも打ち明けられなかった私の真の心の叫びを…
その文字を見ているうちに、私は泣き出していた。
いつもいつも我慢して…唇を噛み締め堪えていた涙が、とめどなく溢れ出た。
泣いたら負けだ…甘えたらおしまいだ…誰も助けてくれる人なんていやしない…
そう言い聞かせ、長い間我慢しているうちに、涙の流し方さえ忘れたと思っていたのに、心の中の想いが私の瞳から涙に変わって流れ出た。
泣いて泣いて泣いて…
止まらない涙に顔が突っ張り、息が苦しくなる程泣き続けた時…
長い時間をかけてようやく出した決意が崩れ去っていることに私は気付いた。
本当は死にたくなんてなかった。
死ぬのは怖いし、どこかが酷く壊れたわけでも、酷い病に冒されたわけでもない私の若い肉体は…魂は心底では死にたくないと叫び続けていたことを私は知りつつもずっと押し隠していたのだ。
私は涙を拭い、再びペンを握った。
じっと目を閉じ、自分の本心を素直に心の中で確認する。
(もう嘘は吐かない…)
ゆっくりと動き出した羽根ペンは、流れるように文字を綴っていく…
「生きたい」
「幸せになりたい」
私の本心と意志が重なったその素直な言葉に、私の瞳からはまた熱い涙が溢れた。
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