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羽根ペン(おとめ座)
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(これは良いかもしれないわ…
あ、こっちのも綺麗…)
私は、目に付いたレターセットを手に取った。
普段めったに手紙など書かない私が、今、書こうとしているのは最期の手紙…遺書だった。
辛抱に辛抱を重ね、いつの間にか私はもう自分一人では抱えきれない程の荷物を抱えていた。
ここに来るまでに、どれほど私が悩み、苦しみ、頑張って来たのかを周りの者達は誰も知らないだろう…
でも、そんな苦しみも今日で終わり…
ただ、私の苦しみを誰も知らないままなのは悔しくて…私はその想いを書き遺すことを決めた。
最期だからこそ、いつもなら使わないような素敵なレターセットを使おうと私はふと思ったのだ。
そして、町外れの雑貨店で私はそれと出会った。
(……珍しい…今時、羽根ペンなんて…
それに、真っ白でとても綺麗な羽根だわ…)
私は思わず羽根ペンに手を伸ばした。
「素敵でしょ?
お気に召しましたか?」
背中からかけられた声に驚いて振り向くと、そこにはおそらく店主であろう中年の女性がにこやかな笑顔を浮かべて立っていた。
「そ…そうですね…これは何の羽根なんですか?」
「お客さん…」
女性は、不意に私の耳元に手をかざし、小さな声で馬鹿げたことを囁いた。
「……この羽根はね、実は、天使の羽根なんですよ。」
店主は、私の顔を見てさらににこやかに微笑んでいた。
(……おかしな人…よっぽど幸せな人なのね…)
天使の羽根だなんて、そんなこと、誰が信じると言うんだろう。
きっと、この人は苦労したこともなく、そういうことを他人に言ってあげることが良いことだとでも考えているのだろう…おめでたい人だと、私は失笑した。
「そんな価値のあるものならきっと相当お高いんでしょうね?」
皮肉をこめて、私は羽根ペンの値段を尋ねた。
「それが…そうでもないんですよ。
ご縁がありそうな方にはお安くしておきますわ。」
そう言って、女性は指で数字を示した。
それは、高級な万年筆が買えそうな値段で、笑顔の裏に隠された狡猾さを見たような気がして、私はどこかおかしくなって、その羽根ペンを購入することに決めた。
この世からいなくなる私がお金なんて持っていても仕方ないのだから、どうせならつまらないものを買ってやった方が面白いと考えたのだ。
「良いお買い物をなさいましたね。
きっと気に入っていただけますわ。」
代金を支払うと、女性はそう言って嬉しそうな笑みを浮かべた。
あ、こっちのも綺麗…)
私は、目に付いたレターセットを手に取った。
普段めったに手紙など書かない私が、今、書こうとしているのは最期の手紙…遺書だった。
辛抱に辛抱を重ね、いつの間にか私はもう自分一人では抱えきれない程の荷物を抱えていた。
ここに来るまでに、どれほど私が悩み、苦しみ、頑張って来たのかを周りの者達は誰も知らないだろう…
でも、そんな苦しみも今日で終わり…
ただ、私の苦しみを誰も知らないままなのは悔しくて…私はその想いを書き遺すことを決めた。
最期だからこそ、いつもなら使わないような素敵なレターセットを使おうと私はふと思ったのだ。
そして、町外れの雑貨店で私はそれと出会った。
(……珍しい…今時、羽根ペンなんて…
それに、真っ白でとても綺麗な羽根だわ…)
私は思わず羽根ペンに手を伸ばした。
「素敵でしょ?
お気に召しましたか?」
背中からかけられた声に驚いて振り向くと、そこにはおそらく店主であろう中年の女性がにこやかな笑顔を浮かべて立っていた。
「そ…そうですね…これは何の羽根なんですか?」
「お客さん…」
女性は、不意に私の耳元に手をかざし、小さな声で馬鹿げたことを囁いた。
「……この羽根はね、実は、天使の羽根なんですよ。」
店主は、私の顔を見てさらににこやかに微笑んでいた。
(……おかしな人…よっぽど幸せな人なのね…)
天使の羽根だなんて、そんなこと、誰が信じると言うんだろう。
きっと、この人は苦労したこともなく、そういうことを他人に言ってあげることが良いことだとでも考えているのだろう…おめでたい人だと、私は失笑した。
「そんな価値のあるものならきっと相当お高いんでしょうね?」
皮肉をこめて、私は羽根ペンの値段を尋ねた。
「それが…そうでもないんですよ。
ご縁がありそうな方にはお安くしておきますわ。」
そう言って、女性は指で数字を示した。
それは、高級な万年筆が買えそうな値段で、笑顔の裏に隠された狡猾さを見たような気がして、私はどこかおかしくなって、その羽根ペンを購入することに決めた。
この世からいなくなる私がお金なんて持っていても仕方ないのだから、どうせならつまらないものを買ってやった方が面白いと考えたのだ。
「良いお買い物をなさいましたね。
きっと気に入っていただけますわ。」
代金を支払うと、女性はそう言って嬉しそうな笑みを浮かべた。
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