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scene 1

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「暗闇に眠る小さな星」

オルジェは、家に戻ってから、もう何度もその言葉を口にしている自分に気が付いた。



(畜生!
こんなことなら、悪魔を捕獲してこいって言われた方がきっと楽だったぜ。
そしたら、あのイアン牧師とトレルの奴をふん縛ってやるのに…)

二人を荒縄で縛って、前と後ろに振り分けて運ぶ自分の姿をオルジェは妄想して思わず噴き出した。



 「ハハハハハ…!!」



しかし、またすぐに我に返る。
こんなくだらないことを妄想している場合ではないことは、オルジェにもよくわかっていた。

イアンは期限はないと言っていたが、それは「その間はおまえはこの町の虜だ」と、言われているのと同じことなのだから…
そうやってどんどんと年を取り、この町を出るなんて想いをおとなしく諦め、自分達の言いなりになるのを待っているのかと思うと、オルジェの胸に熱い炎が滾った。



 (そうは行くか!
オレは絶対、みつけてやるからな…!)



オルジェはもう一度、あの名前を声に出して言った。



「暗闇に眠る小さな星」



そして、今度は目を閉じ、ゆっくりとその言葉の意味を考えてみる…

星とはいっても本当の星であるはずがない。
 本当の星等、手に入れられる道理がないのだから。

当然、なにかの比喩だ。
「星」に例えられるものといえば…一般的には宝石だ。
少し幅を持たせて「輝くもの」と考えてみる。

そうなれば、暗闇は鉱山ではないか?
洞窟や土の中に眠る宝石を探して来いということなのか?

この町には、鉱物が出る山はひとつしかない。
南に下った所にあるラスティア山だ。

遠いといえば遠いが、二~三日もあれば往復出来る。
しかも、それほど険しい山でもない。
採掘場まではちゃんとした道もある。
ちょっとしたハイキング気分で行けてしまう場所なのだ。

(果たして、そんな所から石を採って来るだけで、オレを自由にしてくれるなんてことがあるだろうか…?
いや、そんなこと断じてありえない…!!)

では、どういうことだ?



オルジェは椅子に腰掛け、ラスティア山について知っていることを思い出していた。

そうだ…
確か、あそこには元々たいした石はないはずだ。
 採掘されるのはほとんどが水晶だと聞いた。
 宝石としての価値等、ないに等しいものなのだ。 
 
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