深淵に眠る十字架

scene 3

１

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 「イアン牧師、おはようございます！」

まだ日が昇らない早朝、礼拝堂の扉が勢いよく開いて一人の男が入ってきた。

「おぉ。レクター、久しぶりじゃな」

「ちょっと隣町まで苗の買い付けに行ってたもんで…これ、今朝畑で採れた野菜です。食糧庫に置いておきますね」

「いつもすまんね」

「いいって、いいって」

レクターは野菜の入った箱を持って、裏口の方へと歩いていく。

「あ、そう言えばゴードでトレルと会いましたよ」

「そうか…では、事情は知っておるんじゃな」

イアンは苦笑した。

「えぇ、まあ。あいつ、オルジェの事わがままだとか何とかぶつぶつ言ってましたけど、凄い必死ですって顔してました」

その時の様子を思い出して、レクターは『わはは』と大きな声で笑った。

「表面上ではケンカばかりしていても、本当の家族同然の絆が二人の間には生まれておったからな。兄弟のようであり、親子のようであり。辛い境遇もよく似ておるしな」

「そうですね」

レクターは食糧庫の扉を開けて中に入ると、持っていた箱をテーブルの上に置いた。