深淵に眠る十字架

ルカ(聖夜月ルカ)

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アズラエルは森の奥へ向かうと、落ち葉の上にそっとオルジェの体を横たわらせた。


(お前に罪はないが、石をそのままにしておく事は出来ない…最後に家族と合わせてやれなくてすまないが…)


複雑な表情を浮かべると、アズラエルは右手に青い炎を灯す。


まるで眠っているかのような、穏やかな顔…。


(これでお前は完全に悪魔から体も魂も解放される…どうか、安らかに…)


胸の上で組んだ両手に触れると、

ぼっ…………

あっという間に全身が炎に包まれる。


完全に灰になるまで、アズラエルは傍らで見つめていた。



 *



トレルの前に現れたのは、少年らしさの抜けたオルジェだった。


「オルジェ…どうしてここが分かったんだ?本当の俺が見えるのか?」


薪を割る手を止め、不自由な足を引きずりながら、インギーの姿をしたトレルは駆け寄る。

「お前、随分と大人びた雰囲気になったな!!さぁそんな所に立ってないで、家の中に入ってくれ」


「……………」


「…どうした?会いに来てくれたのに、寂しそうな顔をして…俺がこんな姿になってしまったから、実感が湧かないか」

その言葉に、オルジェは曖昧な微笑みを浮かべた。

「どうして何も話さない?いつもみたいに元気な声で『ドジだな』とか『今まで何やってたんだ、クソ牧師』くらい言ってみろよ…」

「………ィル…」

「?」

オルジェの唇が微かに動く。

「何だ……ユ・フィ・ル…ユフィルがどうした?お、おい!!」


突然、オルジェの瞳からポロリと涙がこぼれたのを見て、トレルは焦った。


「…か……え、ろ、う…帰ろう!?ユフィルに帰ろうって言ってるのか!!」

その言葉に、オルジェは小さく頷く。

「分かった、一緒に帰ろう…。こんな所でのんびり暮らしてる場合じゃないよな!!イアンもきっと俺たちが帰ってくるのを待ってるはずだ…すぐ用意するから待ってろ、故郷に帰ろう…………………な…?」

トレルが手を伸ばすと、オルジェの姿がすぅっと空気の中に溶け始めた。


「オ、オルジェ!?」


輪郭がぼやけ、やがて小さな小さな光となる。

トレルがそっと両手で掴むと、それは静かに消えた。



(まさか、あいつの身に何かあったのか!?)



こうしてはいられない。

治療に専念した甲斐もあって、だいぶ体の回復していたトレルは荷物をまとめ、ユフィルに戻る事を決めた。
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