深淵に眠る十字架

ルカ(聖夜月ルカ)

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scene 12




 黒狼の姿を変えたエルスールの背に乗って、ルシファーの足取りを追っていたトレルは、

「止まってくれ!!」

彼女に声を掛けた。

「どうした、トレル?」

難しい顔をして地面に降り立った彼は、辺りを見回す。

そこは森の中。

スィーク・レノからだいぶ離れた地、だった。

「トレル」

返事すら返そうとしないトレルに、業を煮やしたのかエルスールは本来の姿に戻る。

「トレル!!」

きつく名を呼ばれ、彼はハッと我に返ったようだった。

慌てて彼女の方に振り向く。

「あ、あぁ…何だ?」

「何だではない。どうしたんだ、と聞いてるんだ」

「エルスール、ちゃんとルシファーの後を追っているんだよな?」

その質問に、彼女は少々ムッとした顔をした。

「やつのニオイを追って来たんだ。私の嗅覚を疑うのか…」

「あ、いや。そんなつもりじゃないんだ」

「だったら何だ、ハッキリ言え」

「今、通ってきた道は、俺たちがスィーク・レノへ向かう時に使った道とは違う。だが俺の勘が間違っていなければ、これはユフィルの方に向かっている気がしているんだが…」

言われてみれば、ここから見える太陽の方角から場所を推測することができる。

確かに、トレルの言うとおりかもしれない。

「なぜルシファーのニオイが向こうへ…ユフィルの方へ続いていると思う?」

「さぁ、なぜだろうな…」

皆目見当もつかない、エルスールが呟いた。

「まさかとは思うが、やつはイアンの元へ行ったんじゃないだろうか」

「イアンの…?なぜ悪魔がわざわざ教会に行かねばならない」

「覚醒の妨げになるペンダントを外してもらう為…」

「な、なんだって!?」

「可能性がない事もない。とにかく、気になる。先を急ごう」

「あぁ」

再び、黒狼に姿を変えたエルスールの背にトレルが乗ろうとした。


その時。


前方から駆けてくる馬の姿が見えた。


「白い…馬…」


見覚えのあるそれは、段々と二人のいる方へと近づいてくる。

横まで来ると、嘶きと共に馬の足が止まった。

「!!」

その背に乗っている人物を見て、彼は自分の目を疑う。



「イ、イアン牧師…?」



それは絶対にあり得ない事…トレルが見たのは、若かりし頃の姿のイアンだった。

 
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