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魔法使いの沼地
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「おい、起きろよ。
夜が明けたぜ!」
開こうとした瞼が妙に重い事で、リオは昨夜のことをぼんやりと思い出す。
だが、いつ眠ってしまったのかはリオはまるで覚えていなかった。
「さぁて…今日は何がもらえるかなぁ…」
黒猫の後ろ姿をみつめながら、リオは昨夜の出来事がすべて夢ではなかったことを再認識する。
きっと誰も信じないであろう人間の言葉をしゃべる猫が、今、この目の前にいることを。
「ラルフ…」
その声に、黒猫は黙って振り返る。
「そうだ!おまえは確かちょっとした魔法が使えるんだったよな。
じゃあ、何かうまいものを出してみてくれよ!
あ、こいつにもな!」
ラルフが顔を向けた先には、リオのバッグの上に停まった黄色い小鳥がいた。
昨夜とは違い、その鳥は小さな瞳を開けていた。
「ほら、レヴィも腹が減ったって言ってるだろ?」
「君には、この子の心の中が読めるの?」
「俺にはそんな力はないよ。
ただ、そういう顔をしてるのがわかるだけだ。
こいつ、自分ではほとんど動かない癖に、食欲だけはいっちょ前なんだ。」
ラルフの話によると、この近くにいつも食べ物をくれる人間がいるらしい。
毎朝、散歩がてらこの沼地の傍に来ては、ラルフとレヴィに食べ物をくれてそして帰って行くらしい。
「ここにはこんなに沼があるのに、そのどこにも魚どころか他の生き物だって住んじゃいない。
住めないようになっているのかどうかは知らないが、住んだら住んだでえらいことになりそうだな。
地面を歩き回るような魚が出来ちまったら……気持ち悪くて食う気にもなれないな。」
ラルフの言葉に、リオの顔に小さな笑みがこぼれた。
「ねぇ、とりあえず、いつも食べ物をくれる人の所へ行っておいでよ。
君が来ないと、きっとその人心配するよ。」
「……そうか、それもそうだな。
じゃ、ちょっと行って来るから、レヴィのことは頼んだぞ。」
ラルフは長い尻尾を高くまっすぐに上げながら、ゆうゆうと歩いて行く。
「……そうだ、君には……」
リオは、傍らに落ちていた木の葉を拾い上げ、少しくしゃくしゃに丸めて拳の中に握りしめた。
再びを開かれたその手の平には黄色い小さな粒状のものが乗っていた。
「これだときっと食べられるよね…」
リオが手の平を差し出すと、レヴィはそれをおいしそうについばむ。
そんなレヴィの姿にリオは目を細め、ただ、じっと見つめ続けていた。
「おい、起きろよ。
夜が明けたぜ!」
開こうとした瞼が妙に重い事で、リオは昨夜のことをぼんやりと思い出す。
だが、いつ眠ってしまったのかはリオはまるで覚えていなかった。
「さぁて…今日は何がもらえるかなぁ…」
黒猫の後ろ姿をみつめながら、リオは昨夜の出来事がすべて夢ではなかったことを再認識する。
きっと誰も信じないであろう人間の言葉をしゃべる猫が、今、この目の前にいることを。
「ラルフ…」
その声に、黒猫は黙って振り返る。
「そうだ!おまえは確かちょっとした魔法が使えるんだったよな。
じゃあ、何かうまいものを出してみてくれよ!
あ、こいつにもな!」
ラルフが顔を向けた先には、リオのバッグの上に停まった黄色い小鳥がいた。
昨夜とは違い、その鳥は小さな瞳を開けていた。
「ほら、レヴィも腹が減ったって言ってるだろ?」
「君には、この子の心の中が読めるの?」
「俺にはそんな力はないよ。
ただ、そういう顔をしてるのがわかるだけだ。
こいつ、自分ではほとんど動かない癖に、食欲だけはいっちょ前なんだ。」
ラルフの話によると、この近くにいつも食べ物をくれる人間がいるらしい。
毎朝、散歩がてらこの沼地の傍に来ては、ラルフとレヴィに食べ物をくれてそして帰って行くらしい。
「ここにはこんなに沼があるのに、そのどこにも魚どころか他の生き物だって住んじゃいない。
住めないようになっているのかどうかは知らないが、住んだら住んだでえらいことになりそうだな。
地面を歩き回るような魚が出来ちまったら……気持ち悪くて食う気にもなれないな。」
ラルフの言葉に、リオの顔に小さな笑みがこぼれた。
「ねぇ、とりあえず、いつも食べ物をくれる人の所へ行っておいでよ。
君が来ないと、きっとその人心配するよ。」
「……そうか、それもそうだな。
じゃ、ちょっと行って来るから、レヴィのことは頼んだぞ。」
ラルフは長い尻尾を高くまっすぐに上げながら、ゆうゆうと歩いて行く。
「……そうだ、君には……」
リオは、傍らに落ちていた木の葉を拾い上げ、少しくしゃくしゃに丸めて拳の中に握りしめた。
再びを開かれたその手の平には黄色い小さな粒状のものが乗っていた。
「これだときっと食べられるよね…」
リオが手の平を差し出すと、レヴィはそれをおいしそうについばむ。
そんなレヴィの姿にリオは目を細め、ただ、じっと見つめ続けていた。
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