魔法使いの沼地

ルカ(聖夜月ルカ)

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フレッド

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「リオ、男に声をかけてみろ。」

「ええっ!?
ラルフ…そんなことしたら……」

「少し離れた所から声をかけりゃ良いじゃないか。
いつもと同じだったら逃げりゃ良い。
さ、早く…!」

リオは、更に渋い顔をしながら、ラルフに言われた通りに男に声をかける。



「こんにちは!
えっと…あの、良いお天気ですね。」

その声にゆっくりと男は振り向いた。
不精髭を生やしたどこか神経質そうな中年の男だ。



「これが良い天気っていうのか?
まぁ、確かに雨は降っちゃいないけどな…」

「えっ!?」

リオが仰ぎ見た空はいつの間にかかき曇り、今にも雨粒が落ちてきそうになっていた。
間抜けたことを言ってしまったものだとリオが苦々しく感じている所へ、男の声が飛んだ。



「あんた、暇ならちょっと手伝ってくれないか?
雨が降り出す前に、そいつらを全部取りこみたいんだ。」

「あ、は、はい!」

リオは、バッグを傍らに置き、その上にレヴィを乗せると、男に言われた通りに乾燥した植物を集めては小屋の中へ運び入れた。
植物は小屋の裏手にもあり、すべてを運び入れた時にはリオは汗びっしょりになっていた。







「助かったよ。
ありがとう。
今、お茶を煎れるからな。」

男は、リオを小屋の中に招き入れた。



「やっぱり、あいつにはおまえのことがありのままに見えてるみたいだな。」

「えっ!?あ……そうだった…
すっかり忘れてたけど、まだ太陽が沈んでないのに、あの人は僕のことを恐れない…!
ラルフ、一体なんでだと……ラルフ……?」

ラルフは床にうずくまり、爪を立て低いうなり声を上げる。



「あ……雨が……」

リオは、窓の外に目を向け、ラルフの異変の原因を知った。
雨の日になると、ラルフは全身を激しい痛みに襲われる。
そのことは、リオも何度か見て知ってはいたが、何をしてもその痛みはおさまらず、その度にリオはただ心を痛めるだけだった。



「ラルフ……」

リオは、ラルフの強張った身体をゆっくりとさする。
そんなことをしてもラルフの痛みが少しも和らぐことがないことをリオは十分理解していたが、それでもなお優しくさすり続けた。



(ごめんね、ラルフ…何もしてあげられなくて…)

心の中で詫びながら、リオは手を動かし続けた。

 
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