魔法使いの沼地

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
50 / 135
フレッド

しおりを挟む




「ごめんね、ラルフ、やっぱりこんな無茶するんじゃなかったね。」

息を切らし、噴き出す汗を流しながら、リオはラルフに話しかけた。



「何言ってんだ。
人間とは違って、俺達にはこんな山道、特になんてことない。
疲れてるのはおまえだけだぜ。」

「そっか…それなら…良いんだけど…
この道には……本当にまいったよ。」

「いい若いもんが何情けないこと言ってんだ。
もう下りに入ったんだ。
あと少しで平らな道に出るだろう。
頑張れ、頑張れ!」

リオとは違い、ラルフは涼しい顔をしてリオの前を歩いて行く。

あれから、山を越えるのに三日もの時間がかかった。
リオは、めったにない山歩きに早くも音を上げ、気まぐれにつまらないことを言ってしまったことを後悔したが、時すでに遅し。
ひき返すにもひき返せない状況に、リオの表情はすっかり曇っていた。



「ラルフ…少し休まない?」

「もう少しだって言ってるだろ?
登りじゃないんだ。
しっかり歩け!」

「下りは、膝が痛いんだよ…」

「おまえなぁ……年寄りみたいなこと言ってないで、さぁ早く行くぞ!
雨も降り出してきそうだしな。」

「まさか……」

ラルフはリオの泣き言に少しも耳を貸さず、さっさと山道を歩いて行く。
そうなると、リオも一人で休む気にはなれず、仕方なく足を動かす…
その甲斐あって、夕刻前にリオ達はようやく平らな道へ出ることが出来た。




「あぁ、きつい道程だった…
ラルフ、どこかで少し休もうよ。」

「そうだな…俺も小腹がすいた。
あ、リオ、あそこに小屋があるぞ。
こんな場所にも住んでる奴がいるんだな…」

「本当だね。
ここから町まではまだずいぶんあるだろうし、不便だろうにね。」

そんなやりとりをしていると、ちょうど小屋の扉が開き、中から一人の男が出て来るのが見えた。
男の方もリオに気付いた様子だった。



「まずいな……」

リオは思わず俯いて顔を伏せた。



「……リオ…おかしいと思わないか?」

「……おかしいって……何が?」

「あの男、おまえのことを確かに見たはずなのに、特に驚いた様子がない。
おい、リオ…もう一度顔を上げてみろよ。」

「そういえば……で…でも、そんなことをしたら…」

「いいから!」

リオは渋々顔を上げた。
だが、男はリオ達には背を向け、小屋の前に干された大量の植物とおぼしきものを回収していた。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

思いを込めてあなたに贈る

あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

あなたが決めたことよ

アーエル
恋愛
その日は私の誕生日パーティーの三日前のことでした。 前触れもなく「婚約の話は無かったことにしよう」と言われたのです。 ‪✰他社でも公開

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

処理中です...