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Tropical Fish
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「おい…本当にこっちで合ってるのか?」
「あぁ、間違いないって…」
奴はそう言うけど、一体、何を根拠にそんなことを言うんだ?
もう最寄り駅から三時間半も歩いてるっていうのに、それらしき店は全く見当たらない。
いや、そもそもいくら秘境飯だとは言っても、こんな山ん中にレストランを建てるなんて正気じゃない。
きっと、奴が道を間違ったんだ。
野村は俺の同僚で、自称『秘境飯マニア』だ。
最寄駅からうんと離れた辺鄙な場所にある名店を訪ねるのが奴の趣味だ。
奴にその話を聞いた俺は、軽い気持ちで俺も行ってみたいと言った。
そう、ほんの軽い気持ち…興味本位だったんだ。
まさか、こんなに大変なことだなんて思ってなかったから。
「なぁ、その店の名前…」
「忘れた。」
「え…忘れたって…」
「長ったらしい英語の名前だった。
俺、英語にはとにかく弱いから。
とにかく、魚料理が抜群にうまい店らしいんだ。」
それからさらに一時間…あたりの様子はまるで違わない。
俺は確信している。
絶対に、野村が道を間違えたんだ。
「なぁ…」
「あった!」
「え…?」
「店があった!」
野村の指さす先には確かに建物があり…
そこには素朴な木の看板がかけられていた。
(Tropical Fish…?
なんだ、難しい英語って、『熱帯魚』じゃないか。)
「こんにちは~」
「いらっしゃい。遠い所をお疲れ様です。」
こんな山の中に店を出すなんて、余程の偏屈だと思ってたけど、意外と愛想の良い店主だったから驚いた。
店の中には、すでに先客がいた。
こんな辺鄙な所にやって来るもの好きが、俺たちの他にもいたことに俺はさらに驚いた。
「ご注文はお任せコースでよろしいですね?」
「は、はい。」
やっぱり、こういうところにちょっとした偏屈さがあるんだな。
「お待たせいたしました。
まずはナイルパーチのフライでございます。」
「えっ!?ナイルパーチ…?」
確かそれって熱帯魚だったような…
でも、普通にうまい。
多分、俺の勘違いだな。
「ピラルクーの刺身でございます。」
えーっ!ピラルクーって、熱帯魚だよな。
(あ、そういえば、この店の名前…
確か、Tropical Fish…?
ってことは、この店で出す魚料理っていうのは…)
「ピラニアのから揚げでございます。」
一瞬、びっくりはしたけれど、意外とどれも美味しかった。
熱帯魚って観賞用だけじゃないんだな。
「……山本、どうだった?」
「うん、確かにうまかったよ。」
でも…帰り道のことを考えると、やっぱりちょっと複雑な気持ちだった。
「あぁ、間違いないって…」
奴はそう言うけど、一体、何を根拠にそんなことを言うんだ?
もう最寄り駅から三時間半も歩いてるっていうのに、それらしき店は全く見当たらない。
いや、そもそもいくら秘境飯だとは言っても、こんな山ん中にレストランを建てるなんて正気じゃない。
きっと、奴が道を間違ったんだ。
野村は俺の同僚で、自称『秘境飯マニア』だ。
最寄駅からうんと離れた辺鄙な場所にある名店を訪ねるのが奴の趣味だ。
奴にその話を聞いた俺は、軽い気持ちで俺も行ってみたいと言った。
そう、ほんの軽い気持ち…興味本位だったんだ。
まさか、こんなに大変なことだなんて思ってなかったから。
「なぁ、その店の名前…」
「忘れた。」
「え…忘れたって…」
「長ったらしい英語の名前だった。
俺、英語にはとにかく弱いから。
とにかく、魚料理が抜群にうまい店らしいんだ。」
それからさらに一時間…あたりの様子はまるで違わない。
俺は確信している。
絶対に、野村が道を間違えたんだ。
「なぁ…」
「あった!」
「え…?」
「店があった!」
野村の指さす先には確かに建物があり…
そこには素朴な木の看板がかけられていた。
(Tropical Fish…?
なんだ、難しい英語って、『熱帯魚』じゃないか。)
「こんにちは~」
「いらっしゃい。遠い所をお疲れ様です。」
こんな山の中に店を出すなんて、余程の偏屈だと思ってたけど、意外と愛想の良い店主だったから驚いた。
店の中には、すでに先客がいた。
こんな辺鄙な所にやって来るもの好きが、俺たちの他にもいたことに俺はさらに驚いた。
「ご注文はお任せコースでよろしいですね?」
「は、はい。」
やっぱり、こういうところにちょっとした偏屈さがあるんだな。
「お待たせいたしました。
まずはナイルパーチのフライでございます。」
「えっ!?ナイルパーチ…?」
確かそれって熱帯魚だったような…
でも、普通にうまい。
多分、俺の勘違いだな。
「ピラルクーの刺身でございます。」
えーっ!ピラルクーって、熱帯魚だよな。
(あ、そういえば、この店の名前…
確か、Tropical Fish…?
ってことは、この店で出す魚料理っていうのは…)
「ピラニアのから揚げでございます。」
一瞬、びっくりはしたけれど、意外とどれも美味しかった。
熱帯魚って観賞用だけじゃないんだな。
「……山本、どうだった?」
「うん、確かにうまかったよ。」
でも…帰り道のことを考えると、やっぱりちょっと複雑な気持ちだった。
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