162 / 401
パランのベッド
1
しおりを挟む
「ねぇねぇ、どうかな?」
「うん……可愛いんじゃない?」
「でしょ、でしょ?
絶対に可愛いよね?」
亜紀は、俺の答えに満足したようだ。
確かに、可愛いって言ったのは嘘じゃない。
今日の作品は、廃タイヤを使ったパランのベッドだそうだ。
タイヤを目をむくような鮮やかなピンクに塗り、その上にはにんじんの柄が描かれている。
個性的なものではあるが、とりあえず、若い女の子が好きそうな雰囲気には仕上がっている。
そう、亜紀の趣味はD.I.Y.
特に、廃材を使ったD.I.Y.にハマっている。
そのおかげで、うちの物置には亜紀がどこかで拾い集めて来たがらくたが押し込められ、部屋の中には廃材から生まれ変わった亜紀の作品が所狭しと並んでいる。
「パラン、あんたの寝床が出来たよ。
すっごく可愛いからうれちいでちゅね~」
そう言いながら、亜紀はパランを抱きかかえ、タイヤの真ん中に座らせた。
パランは見慣れないものに、どこか怯えているような様子だ。
鼻をひくひくと動かしている。
「あんまり気にいってないみたいだな。」
「違うわ、気に入ってるのよ。ねぇ、パラン?」
パランは長い耳をぴんと伸ばし、ベッドから飛び出した。
「ほら、やっぱり気に入らなかったんだ。」
「そんなことないってば!
きっとまだ眠くないだけよ。」
亜紀は負けず嫌いだ。
もしかしたら、鼻の良いパランには、ペンキのにおいがきつすぎたのかもしれないと思ったが、これ以上は何も言わない方が良さそうだ。
「このにんじんの柄、なかなか良い感じだな?
亜紀はセンスが良いからな。」
「えへへ…これ、私もけっこう気に入ってるんだ。」
「うん、本当に良いと思うよ。」
亜紀は機嫌を直し、にこにこと笑っている。
嘘というわけではない。
ただ、ちょっと大げさに言ってみただけ。
これくらいのことが言えなくては、夫婦関係はうまくいかない。
その後、結局、パランはそのベッドに寝ることはなかったが、猫のシャルルが気に入って良く寝るようになった。
「うん……可愛いんじゃない?」
「でしょ、でしょ?
絶対に可愛いよね?」
亜紀は、俺の答えに満足したようだ。
確かに、可愛いって言ったのは嘘じゃない。
今日の作品は、廃タイヤを使ったパランのベッドだそうだ。
タイヤを目をむくような鮮やかなピンクに塗り、その上にはにんじんの柄が描かれている。
個性的なものではあるが、とりあえず、若い女の子が好きそうな雰囲気には仕上がっている。
そう、亜紀の趣味はD.I.Y.
特に、廃材を使ったD.I.Y.にハマっている。
そのおかげで、うちの物置には亜紀がどこかで拾い集めて来たがらくたが押し込められ、部屋の中には廃材から生まれ変わった亜紀の作品が所狭しと並んでいる。
「パラン、あんたの寝床が出来たよ。
すっごく可愛いからうれちいでちゅね~」
そう言いながら、亜紀はパランを抱きかかえ、タイヤの真ん中に座らせた。
パランは見慣れないものに、どこか怯えているような様子だ。
鼻をひくひくと動かしている。
「あんまり気にいってないみたいだな。」
「違うわ、気に入ってるのよ。ねぇ、パラン?」
パランは長い耳をぴんと伸ばし、ベッドから飛び出した。
「ほら、やっぱり気に入らなかったんだ。」
「そんなことないってば!
きっとまだ眠くないだけよ。」
亜紀は負けず嫌いだ。
もしかしたら、鼻の良いパランには、ペンキのにおいがきつすぎたのかもしれないと思ったが、これ以上は何も言わない方が良さそうだ。
「このにんじんの柄、なかなか良い感じだな?
亜紀はセンスが良いからな。」
「えへへ…これ、私もけっこう気に入ってるんだ。」
「うん、本当に良いと思うよ。」
亜紀は機嫌を直し、にこにこと笑っている。
嘘というわけではない。
ただ、ちょっと大げさに言ってみただけ。
これくらいのことが言えなくては、夫婦関係はうまくいかない。
その後、結局、パランはそのベッドに寝ることはなかったが、猫のシャルルが気に入って良く寝るようになった。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
皆さん、覚悟してくださいね?
柚木ゆず
恋愛
わたしをイジメて、泣く姿を愉しんでいた皆さんへ。
さきほど偶然前世の記憶が蘇り、何もできずに怯えているわたしは居なくなったんですよ。
……覚悟してね? これから『あたし』がたっぷり、お礼をさせてもらうから。
※体調不良の影響でお返事ができないため、日曜日ごろ(24日ごろ)まで感想欄を閉じております。
望まない相手と一緒にいたくありませんので
毬禾
恋愛
どのような理由を付けられようとも私の心は変わらない。
一緒にいようが私の気持ちを変えることはできない。
私が一緒にいたいのはあなたではないのだから。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
初恋が綺麗に終わらない
わらびもち
恋愛
婚約者のエーミールにいつも放置され、蔑ろにされるベロニカ。
そんな彼の態度にウンザリし、婚約を破棄しようと行動をおこす。
今後、一度でもエーミールがベロニカ以外の女を優先することがあれば即座に婚約は破棄。
そういった契約を両家で交わすも、馬鹿なエーミールはよりにもよって夜会でやらかす。
もう呆れるしかないベロニカ。そしてそんな彼女に手を差し伸べた意外な人物。
ベロニカはこの人物に、人生で初の恋に落ちる…………。
あの素晴らしい愛をもう一度
仏白目
恋愛
伯爵夫人セレス・クリスティアーノは
33歳、愛する夫ジャレッド・クリスティアーノ伯爵との間には、可愛い子供が2人いる。
家同士のつながりで婚約した2人だが
婚約期間にはお互いに惹かれあい
好きだ!
私も大好き〜!
僕はもっと大好きだ!
私だって〜!
と人前でいちゃつく姿は有名であった
そんな情熱をもち結婚した2人は子宝にもめぐまれ爵位も継承し順風満帆であった
はず・・・
このお話は、作者の自分勝手な世界観でのフィクションです。
あしからず!
【完結】探さないでください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
私は、貴方と共にした一夜を後悔した事はない。
貴方は私に尊いこの子を与えてくれた。
あの一夜を境に、私の環境は正反対に変わってしまった。
冷たく厳しい人々の中から、温かく優しい人々の中へ私は飛び込んだ。
複雑で高級な物に囲まれる暮らしから、質素で簡素な物に囲まれる暮らしへ移ろいだ。
無関心で疎遠な沢山の親族を捨てて、誰よりも私を必要としてくれる尊いこの子だけを選んだ。
風の噂で貴方が私を探しているという話を聞く。
だけど、誰も私が貴方が探している人物とは思わないはず。
今、私は幸せを感じている。
貴方が側にいなくても、私はこの子と生きていける。
だから、、、
もう、、、
私を、、、
探さないでください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる