1ページ劇場③

ルカ(聖夜月ルカ)

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バイト仲間はスーパーマン!?

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「久しぶりだなぁ…」

 「へぇ、そうなんだ。」



 *



 今日は、バイト仲間で最近仲良くなった野田の家で飲むことになっている。
 二人とも明日は休みだから、今夜はゆっくり飲み明かそうというわけだ。
 僕達の共通の趣味である美少女アニメのDVDも持ってきた。
 今夜は楽しい夜になりそうだ。



 「しかし、ずいぶん冷えるなぁ…」

 「なぁ、銭湯に寄って行かないか?」

 「え?でも、何も持って来てないけど。」

 「大丈夫。
 俺、しばらくそこでバイトしてたこともあるし、今でもたまに行くからなんとでもなる。」

 野口がそう言うから、僕たちはそのまま銭湯に行くことにした。



 「懐かしいなぁ…」

 銭湯に来たのは、確か、小学生の頃以来だ。
だけど、そこはその頃の記憶とほぼ同じようだった。
もう何十年も経っているのに、まるで時が止まったようなレトロな銭湯だ。
 僕は、湯気で曇った眼鏡を拭いた。



 (わっ!)



 野田の奴、意外にもすごく良い体をしている。
 筋肉がばっきばきだ。
まさか、その体が見せたくて銭湯に誘ったわけじゃないだろうな!?
僕は、なんだか少しコンプレックスのようなものを感じながら、こそこそと中へ入った。



 中では小さな子供が、追いかけっこをしていた。
 広い風呂に来て、テンションが上がるのはわかるが、親は注意しないのか?
 滑りでもしたら危ないのに…
そんなことを思ってたまさにその時、湯船の縁を走ってた年下とみられる方の男の子が足を滑らせたのだ。



 (危ない!)



 僕は、その場に立ち尽くし声さえ出せなかった。
しかし、その時、予期せぬことが起きたのだ。
どこかから飛んできた野田が、床に叩きつけられる寸前の子供の頭の下に潜り込み、そして、男の子を放り投げ、それを見事にキャッチしたのだ。
まわりにいた客たちも、目の前の光景をただ茫然と見守るだけだった。



 「う、うわぁ~ん!」


 抱きかかえられた子供が泣き出した時、一人の客が拍手をした。
そのまばらな拍手は、やがて風呂の中に広がって反響する。



 「いや~、あんちゃん!すごかったな!」

 「まるでサーカスの曲芸みたいだったぜ!」

 客たちは、口々に野田のことを褒めたたえた。
 僕はまだショックから冷め切らず、ただただ、その様子をじっと見ていた。



 野田の奴…どうやらただのオタクじゃなさそうだ。
バイト仲間の見方が、急に変わった瞬間だった。

 
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