254 / 401
意外な出会い
1
しおりを挟む
「ねぇ、どうかしら?」
「私……今は仕事に専念したいっていうか、その……」
「そう言わずに、見るだけでも見てみなさいよ。」
堀江さんは微笑んでるけど、その目はけっこう威圧的だ。
いやだなんて、とても言えない雰囲気。
(困ったな……)
四畳半の部屋で、堀江さんと差し向かいで、私はワインを飲んでいる。
どう考えても、逃げ出せるような状況じゃない。
「あら、これ、美味しいじゃない。」
堀江さんは私が持って来たおつまみのカマンベールチーズを食べてそう言った。
「これ、どこで買ったの?高いの?」
「いえ、どこのスーパーでも売ってますよ。
そんなに高くもないです。」
「へぇ…」
堀江さんは、私と同じアパートの住人。
私が風邪で高熱を出した時、たまたま堀江さんが回覧板を持って来て、苦しんでる私の介抱をしてくれたのが縁で仲良くなった。
年は私よりずっと年上なんだけど、妙に気が合う。
堀江さんは明るいし、気が利くし、とても良い人なんだけど、ただひとつ面倒なのは、独身の私をなんとか結婚させようと頑張ってくれること。
今日はついに写真まで持って来た。
「本当に良い人なのよ。
彼が真面目だってことは、職場の人たちの折り紙付きよ。」
「そうなんですか…」
「ね、見るだけで良いから。」
「はぁ…」
40を目前にした私に持ってくる見合い話なんて、どうせろくなものじゃない。
真面目だけが取り柄だなんて、きっと、頭がはげ散らかってるか、うらぶれたおじさんだと思う。
人の容姿をとやかく言える立場でもないけど、それでもやっぱりそういう人は嫌だ。
でも、逃げ場はない。
私は、仕方なく写真を開いた。
(あ……)
髪の毛はふさふさだった。
しかも、思ってたよりも若くて、けっこう格好良い。
でも、見た目が悪くないのにまだ独身だってことは、性格に難があるのかもしれない。
「なんとかいう難しい研究をしてる人でね。
ずっと出会いがなかったらしいんだよ。
それに、とにかく真面目らしくってさ。
女の扱いもうまくないらしいよ。」
ものすごい遊び人よりは、まだ良いかもしれない。
そんな風に思えたのは、やっぱりその人が格好良かったからかもしれないけど…
「えっと…とりあえず、会うだけ会ってみようかな…なんて…」
「本当かい!?そりゃあ、良かった!」
堀江さんは満面の笑みを浮かべた。
これから始まるかもしれない久しぶりの恋愛に、私は顔がにやけるのを必死にこらえた。
「私……今は仕事に専念したいっていうか、その……」
「そう言わずに、見るだけでも見てみなさいよ。」
堀江さんは微笑んでるけど、その目はけっこう威圧的だ。
いやだなんて、とても言えない雰囲気。
(困ったな……)
四畳半の部屋で、堀江さんと差し向かいで、私はワインを飲んでいる。
どう考えても、逃げ出せるような状況じゃない。
「あら、これ、美味しいじゃない。」
堀江さんは私が持って来たおつまみのカマンベールチーズを食べてそう言った。
「これ、どこで買ったの?高いの?」
「いえ、どこのスーパーでも売ってますよ。
そんなに高くもないです。」
「へぇ…」
堀江さんは、私と同じアパートの住人。
私が風邪で高熱を出した時、たまたま堀江さんが回覧板を持って来て、苦しんでる私の介抱をしてくれたのが縁で仲良くなった。
年は私よりずっと年上なんだけど、妙に気が合う。
堀江さんは明るいし、気が利くし、とても良い人なんだけど、ただひとつ面倒なのは、独身の私をなんとか結婚させようと頑張ってくれること。
今日はついに写真まで持って来た。
「本当に良い人なのよ。
彼が真面目だってことは、職場の人たちの折り紙付きよ。」
「そうなんですか…」
「ね、見るだけで良いから。」
「はぁ…」
40を目前にした私に持ってくる見合い話なんて、どうせろくなものじゃない。
真面目だけが取り柄だなんて、きっと、頭がはげ散らかってるか、うらぶれたおじさんだと思う。
人の容姿をとやかく言える立場でもないけど、それでもやっぱりそういう人は嫌だ。
でも、逃げ場はない。
私は、仕方なく写真を開いた。
(あ……)
髪の毛はふさふさだった。
しかも、思ってたよりも若くて、けっこう格好良い。
でも、見た目が悪くないのにまだ独身だってことは、性格に難があるのかもしれない。
「なんとかいう難しい研究をしてる人でね。
ずっと出会いがなかったらしいんだよ。
それに、とにかく真面目らしくってさ。
女の扱いもうまくないらしいよ。」
ものすごい遊び人よりは、まだ良いかもしれない。
そんな風に思えたのは、やっぱりその人が格好良かったからかもしれないけど…
「えっと…とりあえず、会うだけ会ってみようかな…なんて…」
「本当かい!?そりゃあ、良かった!」
堀江さんは満面の笑みを浮かべた。
これから始まるかもしれない久しぶりの恋愛に、私は顔がにやけるのを必死にこらえた。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
【完結】見えてますよ!
ユユ
恋愛
“何故”
私の婚約者が彼だと分かると、第一声はソレだった。
美少女でもなければ醜くもなく。
優秀でもなければ出来損ないでもなく。
高貴でも無ければ下位貴族でもない。
富豪でなければ貧乏でもない。
中の中。
自己主張も存在感もない私は貴族達の中では透明人間のようだった。
唯一認識されるのは婚約者と社交に出る時。
そしてあの言葉が聞こえてくる。
見目麗しく優秀な彼の横に並ぶ私を蔑む令嬢達。
私はずっと願っていた。彼に婚約を解消して欲しいと。
ある日いき過ぎた嫌がらせがきっかけで、見えるようになる。
★注意★
・閑話にはR18要素を含みます。
読まなくても大丈夫です。
・作り話です。
・合わない方はご退出願います。
・完結しています。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
不機嫌な侯爵様に、その献身は届かない
翠月るるな
恋愛
サルコベリア侯爵夫人は、夫の言動に違和感を覚え始める。
始めは夜会での振る舞いからだった。
それがさらに明らかになっていく。
機嫌が悪ければ、それを周りに隠さず察して動いてもらおうとし、愚痴を言ったら同調してもらおうとするのは、まるで子どものよう。
おまけに自分より格下だと思えば強気に出る。
そんな夫から、とある仕事を押し付けられたところ──?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる