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おまじない
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「ねぇ、クリスマスはどこに行く?
この前行ったイタリアンはどうかな?」
「あそこは無理だな。
きっとカップルで満員だ。」
なんてことだ。
今年のクリスマスも、こいつと一緒だなんて…
俺達は、同期入社で年も同じ、その上、家も近くて、それが縁でなんとなく友達付き合いをするようになった。
神田は、職場でも1、2位を争うイケメンだが、性格に難があるというのか、相当な変わり者のため、なかなか彼女が出来いない。
そんなわけで、俺達は毎年クリスマスを二人で過ごし…
最近では、俺たちがただならぬ関係だというありがたくない噂まで流れているようだ。
とはいえ、ひとりでクリスマスを過ごすのはどうにも寂しい。
だから…やっぱり、神田と過ごすしかないんだ。
「あ、あの…重村さん。
良かったら、今日、軽く飲みに行きませんか?」
「え?の、飲みに…」
クリスマスが近づいたある日、最近、バイトで入って来た青木春香が俺にそう言って来た。
青木は、掃き溜めに鶴というか、アイドル並みに可愛い女の子だ。
その青木に誘われたことで、俺の心は空高く舞い上がった。
「あ、それで…荒井さんも来ますから、重村さんもぜひどなたかお友達を連れて来て下さいね。」
「え……」
そういうことか。青木の狙いは神田なのだと気が付いた。
そりゃあそうだ。
青木ほどの若くて可愛い子が、俺なんかを相手にするはずがない。
それに、青木はまだここに来てそんなに間がないから、神田の変人ぶりをまだ知らないのだ。
多少がっかりとはしたが、仕方がない。
俺は、神田にそのことを話し、俺達は小洒落たイタリアンの店に向かった。
*
「じゃあ、クリスマスもこの4人でパーティしましょうよ!」
飲み会はけっこう盛り上がった。
そして、クリスマスパーティも一緒にという状況に、俺の胸は弾んだ。
「そうだね。それも……は、ハクション!」
神田は突然大きなくしゃみをし…
そして…
「くさめ!くさめ!くさめ!」
「お、おい、神田…」
いつもの神田の癖が出て、俺は焦った。
せっかくうまく行ってるんだから、どうか余計なことは言わないでくれと、心の中で祈った。
「神田さん…それ、なんですか?」
「何って…おまじないだよ。
寿命が縮まったらいやだからね。」
「え?じゅ、寿命?」
「君、知らないの?
くしゃみをすると、魂が抜けるから寿命が縮まるんだよ。
でも、『くさめ』って三回唱えると、大丈夫なんだ。」
青木と荒井は、呆れたような顔をして、神田を見ていた。
そのくしゃみをきっかけに、神田は、思いっきり変人ぶりを発揮して…
青木と荒井は、早々に帰って行った。
もちろん、クリスマスを一緒に過ごすという計画もおじゃんだ。
「ねぇ、クリスマスは出掛けるのはやめて僕の家でやろうか?」
神田は、そんなことも全く意に介さず、俺とふたりのクリスマスを楽しみにしているようだった。
この前行ったイタリアンはどうかな?」
「あそこは無理だな。
きっとカップルで満員だ。」
なんてことだ。
今年のクリスマスも、こいつと一緒だなんて…
俺達は、同期入社で年も同じ、その上、家も近くて、それが縁でなんとなく友達付き合いをするようになった。
神田は、職場でも1、2位を争うイケメンだが、性格に難があるというのか、相当な変わり者のため、なかなか彼女が出来いない。
そんなわけで、俺達は毎年クリスマスを二人で過ごし…
最近では、俺たちがただならぬ関係だというありがたくない噂まで流れているようだ。
とはいえ、ひとりでクリスマスを過ごすのはどうにも寂しい。
だから…やっぱり、神田と過ごすしかないんだ。
「あ、あの…重村さん。
良かったら、今日、軽く飲みに行きませんか?」
「え?の、飲みに…」
クリスマスが近づいたある日、最近、バイトで入って来た青木春香が俺にそう言って来た。
青木は、掃き溜めに鶴というか、アイドル並みに可愛い女の子だ。
その青木に誘われたことで、俺の心は空高く舞い上がった。
「あ、それで…荒井さんも来ますから、重村さんもぜひどなたかお友達を連れて来て下さいね。」
「え……」
そういうことか。青木の狙いは神田なのだと気が付いた。
そりゃあそうだ。
青木ほどの若くて可愛い子が、俺なんかを相手にするはずがない。
それに、青木はまだここに来てそんなに間がないから、神田の変人ぶりをまだ知らないのだ。
多少がっかりとはしたが、仕方がない。
俺は、神田にそのことを話し、俺達は小洒落たイタリアンの店に向かった。
*
「じゃあ、クリスマスもこの4人でパーティしましょうよ!」
飲み会はけっこう盛り上がった。
そして、クリスマスパーティも一緒にという状況に、俺の胸は弾んだ。
「そうだね。それも……は、ハクション!」
神田は突然大きなくしゃみをし…
そして…
「くさめ!くさめ!くさめ!」
「お、おい、神田…」
いつもの神田の癖が出て、俺は焦った。
せっかくうまく行ってるんだから、どうか余計なことは言わないでくれと、心の中で祈った。
「神田さん…それ、なんですか?」
「何って…おまじないだよ。
寿命が縮まったらいやだからね。」
「え?じゅ、寿命?」
「君、知らないの?
くしゃみをすると、魂が抜けるから寿命が縮まるんだよ。
でも、『くさめ』って三回唱えると、大丈夫なんだ。」
青木と荒井は、呆れたような顔をして、神田を見ていた。
そのくしゃみをきっかけに、神田は、思いっきり変人ぶりを発揮して…
青木と荒井は、早々に帰って行った。
もちろん、クリスマスを一緒に過ごすという計画もおじゃんだ。
「ねぇ、クリスマスは出掛けるのはやめて僕の家でやろうか?」
神田は、そんなことも全く意に介さず、俺とふたりのクリスマスを楽しみにしているようだった。
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