1ページ劇場③

ルカ(聖夜月ルカ)

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最低のゴールデンウィーク

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「えっ!ハ、ハワイですか!」

 「そうなんだ。もちろん金はいらない。
 行くか?それともGWは予定が詰まってるのか?」



 時は、4月26日の夕方。
 俺は、安田課長にハワイに行かないかと訊ねられた。
しかも、飛行機代もホテル代もいらない、と。
どうしてもはずせない会合が出来てしまい、行けなくなったかららしい。
 俺には、夢みたいな話だった。
ゴールデンウィークの予定なんて何もなかったし、そもそもハワイなんていまだ行ったこともない。



 「行きたいです!」



そう言いたかったが、無理だと諦めた。
なぜなら俺はパスポートを持ってない。
 申請したところで、出発は明日なのだから間に合うはずもない。



 「予定は何もないんですが、俺、パスポートを持ってないんで…」

 「そうか、それは残念だ…」



 安田課長が去ると同時に、俺は肩を叩かれた。
 振り返ると、そこには森下部長がいた。



 「早見、今、GW中は予定がないと言ってたな。」

 「え?は、はい、まぁ…」

 「実は、今週末に息子が引っ越しをするんだが、良かったら手伝いに来てくれないか?」

 「え?は、はぁ…わかりました。」



ドケチで有名な森下部長のことだ。
ただでこき使われることはわかっている。
しかし、部長の頼みを断ることも出来ない。



 近くだからということで、なんと台車で荷物を運ばせられて、俺の貴重な休みは肉体労働で幕を開けてしまった。
 引っ越しには三日かかった。
そんな重労働の末、森下課長が俺にくれたのは、ペットボトルのお茶一本だけだった。



 5月に入り、久しぶりの友人から電話があった。
 田舎の実家まで車で旅行に行こうと誘われて、ほいほいと着いて行ったら、ゴミ屋敷と化した実家の片付けを手伝わされた。
なんでも、一人暮らしをしていたお母さんが二年前に亡くなったとのことだったが、いつの間にかゴミ屋敷になっていたのだという。
 騙された!そう思ったが、今更ひとりで帰るわけにも行かず、片づけなければ寝るところもなかったので、仕方なく働いた。
 5日間、俺達はゴミを片付け続け、ようやくそれなりに綺麗になった。



 「ありがとう、助かったよ!」

 帰りの道の駅で、友人はかつ丼をおごってくれた。
あれだけ働いて、かつ丼だけ??
でも、何もないよりはましか…そう思うしか自分を慰める術がない。
 気が付けば、GWもあと1日となっていた。



 (あぁ、腹減った…)



 家に戻って最初に思ったのは、そんなことだった。
しかし、しばらく留守をしていたから、家にはろくな食べ物がない。



 「あ、弁当……」

 台所のテーブルの上に弁当を発見した。
そうだ…あの時、弁当を買って来て食べようとしてた時に電話がかかってきて…



(5日か~…)



 大好物のとんかつ弁当を目の前にして俺は悩んだ。
においを嗅いでみたところ、特におかしな様子はない。



 (ま、5日くらい大丈夫だよな。)



その後、俺は猛烈な腹痛に襲われ…GW最終日は、一日中、腹を抱えてうなっていた。
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