1ページ劇場③

ルカ(聖夜月ルカ)

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いつの日か…

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「……良かった。元気そうで。」

 「そう?私、元気そう?」

 「うん。最後に会った時よりはずっと。」

 「そっか…良かった。」

それは、嘘じゃなかった。
 最後に会ったあの頃の小夜さんは、今よりもずいぶん痩せてたし、笑うこともなかった。
 今、目の前にいる小夜さんは、最初に会った時に近い。
 頬もふっくらしてるし、目の下の隈もない。
 表情も明るくなってて、それだけでも安心出来た。



 「家…引っ越したんだよね?」

 「うん……ごめんね。
あの時は、なんか必死っていうのか…一人になって一からやり直さないと、生きていけないような気分になってたの。」

 「そっか……」

この五年…小夜さんは、きっと本当に頑張ったんだろうと思う。
そして、ようやく兄さんの死を乗り越えたんだね。



 彼女が髪をかきあげた時、その細い薬指にさした指輪が目についた。



そうだ…小夜さんがうちに来た時に話してた。
 誕生日プレゼントに兄さんに買ってもらった指輪で、それは小夜さんの誕生石なんだって…確か…ムーンストーンだ。



 「……あ、これ……」

 僕がじっと見ていることに、小夜さんは気づいたようだ。



 「これは……」

 「小夜さんの誕生石だよね?
 兄さんが誕生日に贈った…」

 「え?どうして知ってるの?」

 「小夜さんがうちに来た時、話してくれたんだよ。」

 「そうだっけ?」

 小夜さんは、照れたように微笑んだ。



 「……結婚指輪は真珠にするって…
友君、そう言ってたんだけどね……」

ぽつりと呟いた小夜さんは、ちょっと無理した笑みを浮かべた。



 「……小夜さん。
 真珠の指輪は、僕が贈っちゃだめかな?」

 「え?」

 「……あれから五年経ったけど…僕の気持ちは今でも少しも変わってないんだ。」

 「玲君……」

 僕は、なんて未練がましい男なんだろう。
 自分でも呆れてしまう。
 小夜さんは、今もあの指輪を身に着けている。
それはまだ兄さんを愛してるってことなのに…



「……私ね。友君が亡くなったことはもう受け入れた。
でもね…まだやっぱり好きなの。」

 思った通りだ。
 僕の気持ちが変わらないのと同じように、小夜さんの気持ちも変わっていないんだ。
そんなことわかってたのに……



「……それでも良い?」

 「えっ!?」

 「私の心の中にはまだ友君がいる。指輪だってはずせない。
この先、玲君の気持ちに応えられるかどうかも、私にはまだわからないの。
それでも、私と付き合える?」

 僕は、即座に頷いた。



 「うん、僕はいつまでだって待つよ。
 一番じゃなくて良いんだ。ずっと、兄さんの次で構わない。
 兄さんを忘れてほしいなんて思ってないから。」

 「玲君…ありがとう。」

 「こっちこそ…ありがとう。」



 小夜さんに真珠の指輪を贈る日を、僕は夢見た。

 
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