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010:落ちる天
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「条件……何ですか、それは?」
「なぁに…それほどたいしたものじゃあないさ。
あんたの血を少しばかり…
心配せんでもええ。
ほんの少しで良いんじゃ。
それとあんたの声を少しいただければそれでええ。」
「血と声…ですか…
では、私は声が出なくなるのですか?」
老婆は、歯の抜けた大きな口を開けて笑った。
「あんたは本当に心配性じゃな。
なぁに、ほんの少し声が出にくくなるだけのことじゃ。
ほとんどの者が気付かん程度にな。」
「そうだったんですか。」
ルシアンの顔に安堵の笑みが浮かび、いつもはルシアンが他人に向けて言っていた「心配性」と言う言葉を言われたことを思い出し、ルシアンは下を向いて込み上げる笑いを噛み殺した。
「お婆さん、では、どうかお願いします!
私を一度だけ天界の皆に会わせて下さい!」
ルシアンは、両手を組んで老婆の窪んだ瞳をじっとみつめた。
「あぁ、良いともさ。
ただ、大きな力を使う魔法だから時間はかかるけど、待っておいで。
では、あんたの血と声を分けてもらおうか…」
*
「どうした、ルシアン。
風邪でもひいたのか?」
ルシアンの声は、風邪のひき始めのように少しかすれたものに変わっていた。
血を抜かれたためなのか、ルシアンは身体のだるさを感じていたが寝こむほどのものではない。
探していた子供達の身には何事もなく、老婆と別れた後に出会うことが出来た。
「いいえ、なんでもないわ。
少し疲れたのかもしれないわね。」
「珍しいね。
元気が取り柄の君が疲れたなんて…」
「まぁ、酷い!
ラーシェル!私の取り柄は元気だけなの?!」
大袈裟に頬を膨らませるルシアンにラーシェルが優しく微笑みかける…
この世の誰よりも愛し信頼する夫にも、ルシアンは今日出会った老婆のことは話さなかった。
そのことを話せば、自分が天界の者であるということを打ち明けなければならなくなるから…
ラーシェルなら、話してもきっとすべてを受け入れてくれる…そう信じる気持ちは大きかったがそれでもルシアンには話せなかった。
たとえ、それが砂粒程の小さなリスクであったとしても、ラーシェルを失うことを考えると身が縮む想いだったのだ。
(一番の心配性は、この私だったのね…)
「なぁに…それほどたいしたものじゃあないさ。
あんたの血を少しばかり…
心配せんでもええ。
ほんの少しで良いんじゃ。
それとあんたの声を少しいただければそれでええ。」
「血と声…ですか…
では、私は声が出なくなるのですか?」
老婆は、歯の抜けた大きな口を開けて笑った。
「あんたは本当に心配性じゃな。
なぁに、ほんの少し声が出にくくなるだけのことじゃ。
ほとんどの者が気付かん程度にな。」
「そうだったんですか。」
ルシアンの顔に安堵の笑みが浮かび、いつもはルシアンが他人に向けて言っていた「心配性」と言う言葉を言われたことを思い出し、ルシアンは下を向いて込み上げる笑いを噛み殺した。
「お婆さん、では、どうかお願いします!
私を一度だけ天界の皆に会わせて下さい!」
ルシアンは、両手を組んで老婆の窪んだ瞳をじっとみつめた。
「あぁ、良いともさ。
ただ、大きな力を使う魔法だから時間はかかるけど、待っておいで。
では、あんたの血と声を分けてもらおうか…」
*
「どうした、ルシアン。
風邪でもひいたのか?」
ルシアンの声は、風邪のひき始めのように少しかすれたものに変わっていた。
血を抜かれたためなのか、ルシアンは身体のだるさを感じていたが寝こむほどのものではない。
探していた子供達の身には何事もなく、老婆と別れた後に出会うことが出来た。
「いいえ、なんでもないわ。
少し疲れたのかもしれないわね。」
「珍しいね。
元気が取り柄の君が疲れたなんて…」
「まぁ、酷い!
ラーシェル!私の取り柄は元気だけなの?!」
大袈裟に頬を膨らませるルシアンにラーシェルが優しく微笑みかける…
この世の誰よりも愛し信頼する夫にも、ルシアンは今日出会った老婆のことは話さなかった。
そのことを話せば、自分が天界の者であるということを打ち明けなければならなくなるから…
ラーシェルなら、話してもきっとすべてを受け入れてくれる…そう信じる気持ちは大きかったがそれでもルシアンには話せなかった。
たとえ、それが砂粒程の小さなリスクであったとしても、ラーシェルを失うことを考えると身が縮む想いだったのだ。
(一番の心配性は、この私だったのね…)
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