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014:懐かしの家路

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「セス、今向かってるのは君の家?」

「そのつもりだけど…どこか他に行きたい所でもあるのか?」

「いやだな、セス、忘れたの?
僕は洞窟のあちら側のことしか知らなかったんだよ。
それに、洞窟の中では君はこっちのことをあんまり教えてくれなかったじゃない。」

「だって、俺が生まれたのは特になんてことのない町だからな。
このあたりも特にたいしたもんはないし…
それに、フォルテュナの話を聞いてた方が面白かったからな…」

フォルテュナは俯いたままで小さく微笑んだ。
フォルテュナが洞窟の中で彼に語ったのは、コトノハの泉での出来事だった。
今までに出会った人間のことや泉を守る精霊のことを、町に伝わる伝説の話として聞かせたのだ。



「ねぇ、セス…
君は願いが叶う泉の水を飲んでみたいと思うかい?」

「そうだな……飲んでみたいよ。」

「えっ!」

フォルテュナは、瞳を見開きセスの顔をまじまじとみつめた。
彼のことだから、「そんなものに興味はない…」そう言うと考えていたからだった。



(そうだよね。彼だって人間だ。
欲望がないはずがないんだ。)

フォルテュナはどこか寂しげな微笑を見せた。



「君は、泉の水に何を願うの?」

「出来る事なら…金が欲しいんだ。
それも大金が…」

「……お金か…
ストレートだね。
……あ、町が見えて来たよ!」

セスに対する落胆の気持ちを隠すように、フォルテュナはわざと弾んだ声を出して町を指差した。



「今夜は久しぶりにうまいもんでも食おう!
うまいもんって言っても、缶詰よりはうまいもんってことだけどな!」

彼の冗談に作り笑いを浮かべ、フォルテュナとセスは町へ向かった。

 
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