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迷いと悩みの日々が続いた。
幸い、周りの人からは何も言われないままだったけど、東條さんはまた家に来てお父さんと会い、来週には結納をすることになっている。
指輪もそろそろ出来上がってくる。



もうここまで来たら、逃げ出すことは出来ない。
わかってるのに、まだ躊躇っている私がいる。
往生際が悪いっていうのか、なんていうのか…
とにかく不安なんだよね、いろんなことが。
不安とはいえ、ほとんど全部東條さんがやってくれてるから、私はなにもしてなくて…
何もしてないのに、どんどん状況が進んで行くのが不安なのかもしれないけど…



ちなみに、東條さんとは用事のある時以外は会ってない。
二人っきりで食事に行くとか、映画を見に行くとか、つまり、結婚前のカップルがするであろうことは、何もしてない。
だから、不安なのかもしれないね。



私たちの間に愛情はないんだから当然のことなのに、私はどこかそういうことを期待していたのかもしれない。
そうだよ…愛情はなくても、そのくらいしたって良いはずだもん。
そういうことを重ねるうちに相手のことがわかるんだから。
ってことは、東條さんは私には何の関心もないってことなのかな?
ただ、私が凡人だからそれが新鮮だってことだけで、愛情も関心も何もないのに結婚するってこと?
そう思うと、なにか薄ら寒いものを感じるし、寂しくも思うのだけど…
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