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「まぁ、なんて大きな石!
それにすごく綺麗ね。
高かったんじゃないの?」

お母さんは、私の指輪をまじまじとみつめた。



そういえば、値札は付いてなかったから、この指輪がいくらなのかはわからない。
でも、潤さんとは友達だって言ってたし、私のことは本気で好きなわけじゃないから、意外と安いのかもしれないね。
それに、普通、婚約指輪はプロポーズの時に渡すものだと思うのだけど、「あ、指輪出来て来たよ、はい。」って紙袋を渡されただけだもの。



何もサプライズまでしてくれなくても良いけど…
やっぱりプロポーズはされたかった気がするよ。
もし、誰かに「プロポーズの言葉は?」って訊かれても、本当のことが答えられないもの。



とはいえ、確かに綺麗だ。
カットもデザインもすっごく素敵。
こんなのをもらえただけでも、喜ぶべきなのかなぁ?



だよね、だよね。
私みたいな普通の子だったら、きっとお相手も普通で、きっとこんな立派な指輪は買えないよね。
お姉ちゃんの婚約指輪は石のついてないシルバーの指輪だったよ。
あれにはさすがにお姉ちゃんもちょっとがっかりしてたみたいだけど、拓郎さんにお金がないことはわかってたから、それで何も言わなかったんだよね、きっと。
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