ラッキーアイテムお題短編集６

目覚まし時計（ふたご座）

１

『おい、ジュリアン、いいかげん起きたらどうなんだ？』

「う…うぅん…
誰だ…うるせぇな…」

まだ眠いと言わんばかりに、不機嫌に顔をしかめ、瞼をこすりながら、ジュリアンはようやく目覚めた。



『……全く、おまえと言う奴は…
昨夜、あんなに飲むからだぞ。』

「朝っぱらからがたがた言うな！
……って、あぁーー！
今日は早くから掘りに行こうと思ってたのに、もうこんな時間じゃねぇか！」

ジュリアンは壁の時計を見て、声をあげた。



「あ～あ…
こんな時間じゃ、今日はもう行けねぇな。
……どうせ起こすならもっと早くに起こせよな！」

そう言って、ジュリアンは大きな口を開けてあくびをする。



『起こしてほしいなら、ちゃんと頼め。
そうすれば、起こしてやらないでもないぞ。
……それと、もう少し慎ましやかに欠伸が出来ないのか？
全く、おまえには品性の欠片もないのだな…』

「うっせー！
いちいちそんなこと考えてあくびが出来るかってんだ。
……あ、そうだ。
この際、目覚まし時計でも買うとするか。
目覚まし時計だったら、誰かさんみたいにうるさいことは言わねぇからな。
うん、そうしよう。」

ジュリアンはそう言うと、もう一度大きなあくびをしてゆっくりと起き上がった。
エレスは、ジュリアンの皮肉にも特に動じる様子はなく、ただ、ジュリアンの様子を見守るだけだった。



＊



「へへっ！
これがあればもう大丈夫だ！
どんなに飲んでも明日はこいつが起こしてくれる！」

ジュリアンは、買って来たばかりの目覚まし時計をエレスに見せびらかすようにしてベッドの脇に置いた。



『それは良かったな。』

「じゃあ、俺は夕食がてら飲んで来るからな。」

『飲み過ぎるなよ。』

「余計なお世話だ！」

乱暴にドアを閉め、ジュリアンはまだ日の暮れきらない町へ向かった。




＊




『おい、ジュリアン、いいかげん起きたらどうなんだ？
もう昼だぞ。』

「う…うぅん…だ、誰だ…
昼がどうしたって…？」

いつものように瞼をこすり、ジュリアンは差しこむ光に顔をしかめた。



「……ん？
………あぁーーーー！」

『……大きな声を出すな…やかましい…』

「な、な、なんで、こんな時間なんだ！
この目覚まし…なんで、鳴らなかったんだ！」

ジュリアンは、ベッドの脇の目覚まし時計を睨み付けた。



『……おまえは馬鹿か…
目覚まし時計は、ベルを鳴らす時間をセットしなくては鳴らないことを知らないのか…』

「……え…？
ち、畜生！そうだ、その通りだ！
だ、だったら、なんで昨夜そのことを教えなかった！」

『いくらなんでも、そんなことに気付かない者がいるなどとは思っていなかったのでな…』

「く…」

エレスの意地悪な視線に、ジュリアンは唇を噛み拳を握り締めた。