229 / 308
side 香織
5
しおりを挟む
「そ…それで、店はいつまで……」
「一応、年内には向こうに行くつもりなの。
だから、遅くとも来月の半ばにはもう畳むつもり。
本当にごめんなさい。
こんなに急なことになってしまって……」
(来月の半ば……)
目の前が真っ暗になった気分だった。
酷い話だけど、私が一番堪えたのは、お店がなくなるということよりも、そうなったらもう堤さんに会えないってことで……
そりゃあ、家は駅を隔てただけのすぐ近所だけど、たとえ、最寄り駅は同じでも、何か接点がなければ人は知り合うことはない。
私がこの近所のどこかに就職したとしても、それが堤さんの立ち寄られることのない所だったら、会うことはなくなってしまうだろう。
(なんてこと……)
悲しくてたまらなかった。
確かに諦めるつもりだったけど……
そう思いながらも、ほぼ毎日堤さんの顔を見ることが出来て、そして挨拶程度とはいえ言葉を交わすことが出来て……
それだけで、私はどれほど救われて来たことか……
なのに、これからはもうそんなことも出来ない。
まだそうなったわけではないのに……考えただけで悲しくて涙がこぼれた。
「篠宮さん…本当にごめんなさいね。」
「い、いえ……でも、とても残念です。」
奥様は、まさか私が堤さんのことを考えて泣いたなんてご存じないから、優しく手を握って下さって……
申し訳ない気持ちを感じながらも、私は適当なことを答えた。
(私は、なんて自分勝手な人間なんだろう……)
そんなことを思う冷静さの反面、涙は止まらない。
堤さんともう会えなくなるという現実は、何にも例えられない程、悲しくて辛いものだった。
「一応、年内には向こうに行くつもりなの。
だから、遅くとも来月の半ばにはもう畳むつもり。
本当にごめんなさい。
こんなに急なことになってしまって……」
(来月の半ば……)
目の前が真っ暗になった気分だった。
酷い話だけど、私が一番堪えたのは、お店がなくなるということよりも、そうなったらもう堤さんに会えないってことで……
そりゃあ、家は駅を隔てただけのすぐ近所だけど、たとえ、最寄り駅は同じでも、何か接点がなければ人は知り合うことはない。
私がこの近所のどこかに就職したとしても、それが堤さんの立ち寄られることのない所だったら、会うことはなくなってしまうだろう。
(なんてこと……)
悲しくてたまらなかった。
確かに諦めるつもりだったけど……
そう思いながらも、ほぼ毎日堤さんの顔を見ることが出来て、そして挨拶程度とはいえ言葉を交わすことが出来て……
それだけで、私はどれほど救われて来たことか……
なのに、これからはもうそんなことも出来ない。
まだそうなったわけではないのに……考えただけで悲しくて涙がこぼれた。
「篠宮さん…本当にごめんなさいね。」
「い、いえ……でも、とても残念です。」
奥様は、まさか私が堤さんのことを考えて泣いたなんてご存じないから、優しく手を握って下さって……
申し訳ない気持ちを感じながらも、私は適当なことを答えた。
(私は、なんて自分勝手な人間なんだろう……)
そんなことを思う冷静さの反面、涙は止まらない。
堤さんともう会えなくなるという現実は、何にも例えられない程、悲しくて辛いものだった。
0
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる