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ルカ(聖夜月ルカ)

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001. 砂の城

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「そうかそうか、そりゃあ、よく訪ねてくれたな。
今、ちょうど夕飯を食べようとしていた所なんじゃ。
 良かったらあんたらも一緒にどうじゃ?」

ストック爺さんの家っていうのは、町外れの隣町に続く街道の近くにあった。
俺達が、小人の村のことを尋ねると、逆に「あんたらは小人がいると信じているのか?」と尋ねられ、それに頷くと爺さんは途端に笑顔になった。

爺さんは、俺達に夕食までもてなしてくれて、それがすむと酒をちびりちびりとやりながら、小人の村のことを話してくれた。
なんでも、爺さんが小人に興味を持ったのは、数十年程昔の頃のことらしい。
その頃、知り合いの木こりの仕事を手伝っていた爺さんはある日忘れ物を取りに夜の山へ向かった。
その時、山の中で小人をみかけ、驚いた爺さんは早速それを知り合いに話した所、動物か何かを見間違えたのだと一笑に付されたらしい。
爺さんは、友達にもそのことを話したが、その反応は皆同様で、誰一人として信じてくれる者はいなかったらしいんだ。



「じゃがな、あれは間違いなく小人だったんじゃ!
あの時は夜だったとはいえ月が明るかったし、今とは違って目もはっきりしておった。
動物と小人を見間違うわけがなかろう?
なんせ、小人は服を着てその上帽子までかぶっとったんじゃからな。」

「帽子…!?
なぁ、爺さん、小人はどんな帽子をかぶってたんだ?
顔は覚えてるか?」

「あぁ、はっきり覚えとる。
小人は、可愛いものだと思っとる者が多いだろうが、意外とそうでもないんじゃ。
耳も目も鼻もやたらとでかくてな、緑色の布で作られた三角の帽子をかぶっておった。」

「爺さん!その小人、頭がはげてなかったか!?」

「はげて…?」

爺さんはそう言いながら腕を組み、当時の記憶を辿るようにじっと目を閉じる。



「……いや、帽子をかぶっとったからそれはどうだかわからんが…言われてみたら、髪の毛は全く見えなかったような気もする…」

爺さんの言葉に、俺の鼓動は一気に速くなった。
同じだ…
帽子の色は違うけど、きっと同じ小人だ!
いや、俺が会ったのとは違う奴かもしれないけど、同じ種類の小人であることは間違いない。



「どうかしたのか?」

「爺さん!俺もそいつに会ったんだ!」

「なんじゃと……!?」

 「その山っていうのはどこのことなんだ!?」



話を聞いてみると、爺さんが小人を見たっていう山は、俺が両親とキャンプに行った場所と目と鼻の先の山だった。
見た時期はずいぶんと違うものの、そのあたりで見かけられた小人の村がなぜこの遠く離れたマザークロスにあるのかという疑問がわきあがった。
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