Gift

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
5 / 697
001. 砂の城

しおりを挟む
俺は、小人に会った時のことを爺さんに話した。
ランスロットが傍にいたから、その内容は少し嘘を吐いた。
もちろん、小人にかけられた魔法のことも言わなかったが、爺さんは俺の話を聞いて涙を流さんばかりに喜んだ。



「こんな年になってやっとおまえさんのような人に巡り合えるとはな…
長生きはするもんじゃな。」

そう言いながら、爺さんは指で目尻の涙を拭うと、再び、話し始めた。



「あの日、わしは皆に馬鹿にされたことがものすごく悔しくてな…それから一生懸命に小人についてのことを調べまわった。
あちこちを旅してな。
そして、ようやく手に入れた小人の村の地図をわしはうかつにも盗まれてしまったんじゃ。
だが、記憶を頼りにわしはなんとかこの町に辿りついた。
その頃、この町には小人の村があるという噂が立っておって、すでにたくさんの者達が小人の村を探しに来ておった。
きっと、その中にはわしの地図を奪った輩もおったと思う。
だが、誰もその場所を見つけ出した者はなく、そのうちにそんなものはただの伝説だと言われるようになったんじゃ。
わしもさんざん探したがどうしてもみつからず、やっぱり、皆の言うように小人の村のことはただの伝説であの地図も偽物だったのかもしれんと思い始めていた…じゃが、その頃……」

「みつけたのか!?あの扉を……!」

「扉じゃと…?まさか、おまえさん方……」

俺は、ゆっくりと頷いた。



「実はついさっきみつけたばかりなんだけど、その扉がどうしても開かないんだ。
そのうちに扉は消えてなくなった。
明日出直すしかないな。」

爺さんは、そう言った俺に向かって首を振る。



「……どういうことなんだ?」

俺は、爺さんが首を振った意味を尋ねた。



「あの扉は鍵がないと開かんのじゃ。」

「鍵が……?
まさか、爺さん、その鍵を持ってるっていうんじゃないだろうな?」

「いや、持ってはおらん。
じゃが、鍵の在り処はわかっている。」

「じゃ、なんで取りに行かないんだ?」

「行ってみて取れないことがはっきりとわかった。」

「爺さん…それは、一体、どういうことなんだ!?」

爺さんのはっきりしない物言いに、俺は声を荒げた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ガチャから始まる錬金ライフ

あに
ファンタジー
河地夜人は日雇い労働者だったが、スキルボールを手に入れた翌日にクビになってしまう。 手に入れたスキルボールは『ガチャ』そこから『鑑定』『錬金術』と手に入れて、今までダンジョンの宝箱しか出なかったポーションなどを冒険者御用達の『プライド』に売り、億万長者になっていく。 他にもS級冒険者と出会い、自らもS級に上り詰める。 どんどん仲間も増え、自らはダンジョンには行かず錬金術で飯を食う。 自身の本当のジョブが召喚士だったので、召喚した相棒のテンとまったり、時には冒険し成長していく。

10秒で読めるちょっと怖い話。

絢郷水沙
ホラー
 ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)

処理中です...